色を脱ぎ捨てる、あるいは残す理由。——モノクロとシネマティックの境界線

カメラを構え、ファインダーを覗く。その瞬間、僕はいつも迷っている。

「モノクロにするべきか、カラーにするべきか」

これまでcoaPHOTOを通じて多くの写真を残し、何万文字もの言葉を綴ってきた。

それでも僕は、目の前の光景を「モノクロ」で記すべきか、「色」記すべきかという問いに、明快な答えを出せずにいる。

周りからすれば、写真家は迷いなくシャッターを切るカリスマ的存在のイメージを持たれるが、実態はもっと泥臭いものだ。

色という概念に溺れそうになりながら、必死に「何を取り除くか」を常に探している。

今回は、そんな僕の頭の中にある、とり留めのない葛藤の話をしようと思う。

以前にも『色のある世界と色のない世界』について語ったことがあるが、さらに深くモノクロとカラーの存在について触れている。

本記事を読むことで、写真家リョウがモノクロ写真とシネマティック写真の並行世界を撮り続けている意味を知ってもらえるだろう。

モノクロを選ぶ瞬間の静かな葛藤

モノクロという選択は、ある種の「覚悟」に近いのかもしれない。

目の前に、鮮やかな夕景が広がっているとき、その美しさをそのまま写し取れば間違いなく「綺麗な写真」になる。

だけど、ふとした瞬間にその色が邪魔に思えることがある。

鮮やかな色は情報が多すぎて、自分が本当に心惹かれた「光の角度」や「影の鋭さ」がぼやけてしまうような感覚になる。

だから僕は色を取り除く。

「おしゃれだからモノクロにする」のではなく、むしろ、色という情報を捨て去らないと、伝えたい『静けさ』に届かないと感じた写真がモノクロになる。

とは言え、その感覚が正しいのか間違っているのかわからなくなって、今でも現像画面で指が止まることは珍しくはない。

今でも、現像で写真の方向性を見失う事は多いが、それを静かにすり抜けてきた写真たちが、モノクロになる。

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シネマティックな色彩、その残すべき体温

一方で、どうしても色を捨てられない瞬間もあって、その場の「湿度」や「温度」が、色と密接に結びついている時だ。

例えば、雨上がりのアスファルトが反射する鈍い青や、古い喫茶店の隅に溜まった琥珀色の光。

これらは、モノクロにすると「形」は残るが、その場に流れていた「時間」まで消えてしまう。

僕が「シネマティック」と呼ぶカラー写真は、単に映画のような色合いを目指すものではなく、そこにある空気の温度を閉じ込めるための選択だ。

引き算をしすぎず、かといって盛りすぎもしない。

静かな空間の中に、ほんの少しだけ感情の色をのせると、不思議とストーリーが見えてくる。

モノクロとカラーの境界線は、「その場の温度を、指先に感じるかどうか」という、極めて感覚的な場所にあるのかもしれない。

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ハードディスクに眠る「ボツ写真」の価値


※上記写真がボツの理由 : 構図に迷いがあって抽象的に見える。

僕のハードディスクには、日の目を見ることのなかった数千枚の「ボツ写真」が眠っている。

ピントが外れたわけでも、露出を間違えたわけでもない。

見返した時に「語りすぎていた」写真たちだ。

coaPHOTOが大切にしている「余白」や「静けさ」を、自らのシャッターが壊してしまったと感じた時、その写真はボツになる。

かつての僕は、それを「失敗」だと恥じていたが、最近はそのボツ写真たちこそが、自分らしさではないかと思うようになった。

「これは違う」
「これではない」

と迷い、弾き出された写真の山。

その積み重ねの先に、本当に自分が納得できる一枚が存在する。

あなた自身も、日常で何かを選び、何かを諦める瞬間に迷うことがあるだろう。

僕のボツ写真は、その迷いの足跡のようなものとして価値を感じている。

決して「無駄」ではなく、そのボツ写真があるからこそ生まれた、モノクロとシネマティックの並行世界だ。

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最後に、迷い続けることがスタイルになる

結局、どれだけ経験を積んでも、僕の迷いは消えることはない。

モノクロにするか、色を残すか。
あるいは、ボツ写真に入れるか。

その境界線で立ち止まる時間は、辛くもあるが、どこか心地良さが残る。

完璧な正解なんてない。

ただ、その時の迷いを正直に写真に乗せること。

それこそが、coaPHOTOという場所が、僕にとっても訪れてくれる誰かにとっても、静かな拠り所であり続けるための条件なのではないだろうか。

これからも僕は、正解のない問いを抱えながら、ファインダー越しに迷い続けていきたい。

静けさを感じるモノクロ写真ギャラリー

忙しない日常に、
ほんの少しの静かな時間を。

光と影のあいだに、
言葉にならない何かが残る。

今、心に残った余韻の続きを——
Artgeneに置いています。

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