「せっかく楽しみにしていたポートレート撮影なのに当日が雨で残念」
そう思ってしまっては、せっかくのチャンスを逃してしまう。
なぜなら、雨の日のポートレート撮影は、普段とは違ったシネマティックな写真を撮ることができるからだ。
『シネマティックな写真』とは、映画のワンシーンを切り取ったようなストーリー性のある写真。
雨の日になると憂鬱な気分になる人が多いが、その憂鬱な気分が人の弱さを表現して人間らしいと、僕は感じる。
例えば、こちらの写真。
少し強い雨が降っていたので、近くの線路高架下トンネルでモデルさんを撮影した写真だ。
昼間でも薄暗く、冷たくて憂鬱な表情がにじみ出ている。そのネガティブな部分に人らしさを感じてしまう。
だから、雨の日に人物を撮影するのは「チャンス」と思ってしまう。
憂鬱な表情がドラマを生む
雨の日に人物を撮影すると、憂鬱な表情が出やすくなって、その表情がドラマを生む。
そもそも、雨の日に気分が下がるのはなぜか。
まず、楽しみにしていたお出かけがキャンセルになる。
それに、お気に入りの服が濡れたり、心地よい太陽の光を浴びることができなかったり。
子供の頃、雨が降ると遊びに行けなくなって、残念な気持ちのなったことはないだろうか。
その気持ちのまま大人になって、『雨の日=残念』というイメージがついてしまっているのだろう。
そんな気分なのに、雨の日に「楽しそうに」という方が難しい。
だから僕は、「『雨の日=残念』という自然な感情を撮ればいいのでは」と考えた。
無理に笑顔になってもらう必要はない。
綺麗にポージングしてもらう必要ない。
雨の中で傘をさして、思いふけるだけで画になる。
下を向いてもらうだけで、映画のワンシーンのような写真になる。
雨の日の憂鬱な感情を捉えた写真
冷たい感じがする雨の日の写真。これがまた感情を揺さぶる。
雨が上がり、ほんのりと明るく、ウェットな余韻を写真に捉える。
[ Canon EOS 7D MarkII ƒ/2.8 1/50 85mm ISO100 ]
僕が雨の日に撮影をするときに意識していることは、できるだけモデルさんの自然な表情を撮ること。
雨の湿気で髪が乱れていても、あえて整えずに無造作の動きで撮る。
[ Canon EOS 7D MarkII ƒ/5.0 1/40 85mm ISO400 ]
極端に言えば、上の写真のような乱れた方が写真に動きが出て、その瞬間にしか撮ることができない表情だと思っている。
髪の毛の動きで、写真の印象は大きく変わる。
元美容師だった僕は、どうしても髪の流れを見てしまう。
僕はどちらかというと、整えられたヘアースタイルよりも、無造作ヘアーが好きなので、風になびく髪を撮るのは得意な方だ。
モデルに安心してもらうことを意識する
僕は作品撮りをする上で、モデルさんが安心して撮影をしてくれるように心がけている。
初対面のモデルと撮影をする場合、警戒心をもってしまうモデルさんも多い。
僕にモデル撮影の実績があったとしても、実際に会うとその警戒心は伝わってくる。
だから僕はその警戒心を和らげるために、事前に次のようなことを伝えるようにしている。
- どんな写真を撮影するのか
- どんな衣装をイメージしているのか
- どこで撮影をするのか
このように、事前にイメージを伝えるだけで警戒心を取り除くことができて、撮影に集中してもらえる。
雨の日はさらに警戒心が強くなるが、
「雨の日らしい憂鬱な写真を撮りたい」
と事前に伝えていると、モデルもイメージが浮かんで安心してくれる。
どんな傘でいけばいいのか、雨が強く降った場合の撮影はどうなるのか、なども伝える。
こうして安心してもらえれば、次回の撮影も快く引き受けてもらえる。
雨の日だから撮ることができる、ストーリーを感じるシネマティック写真。
ぜひ、雨の日に人物を撮影する場合は、雨らしいネガティブな写真を撮ってみてほしい。
もちろん人物写真だけではなく、風景でも映画のワンシーンのようなシネマティック写真を撮ることができるので、こちらも挑戦してみてはいかがだろうか。
今回のモデル紹介
今回の記事の中に登場したモデルの方は、『海国りん(@mikunirin_)』さん。
役者を目指していることもあって、いろいろな表情を見せてくれて、僕の写真撮影の勉強にもなったので、感謝しています。
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