時間の流れる空間を捉えるために、スローシャッターへ挑戦した日

撮影記録

日差しが強く、肌を突き刺す光の中。

僕は三脚を準備し、ND可変フィルターを取り付け、日常では感じることができないゆったりとした時間を捉えるために、地元の宇治の町へと向かった。

この日はふと、シャッター速度を遅くして撮ってみたくなった。いわゆる、スローシャッターと呼ばれる撮影だ。

これまで、現実世界の中に流れる時間を写し続けてきた僕にとって、スローシャッターは真逆の撮影法でもある。

少しの風さえ大きな影響となってしまうし、NDフィルターを通して光をコントロールすることは、現実とは少し違う世界をつくることにもつながる。

しかし、僕が意識したのは技術を見せることではなく、“この世界に流れる静かな時間を違和感なく感じてもらうこと”だ。

たとえスローシャッターであっても、そこに写る時間だけは自然でありたいと思った。

静かな町を、より静かに撮る

今回訪れたのは、10年以上前に大阪から移住してきた、抹茶が名産の町『宇治市』だ。

10年以上住み続けている僕にとっては、それほど特別な町ではない。

何度も歩き、何度も宇治川で静かな時間を過ごしてきた場所である。

それでも三脚を立て、シャッターを数秒間開いてみると、不思議なことにその景色が新鮮に見えてくる。

観光客が増えたといえど、和の静けさを持つこの町でも、スローシャッターで撮れば、さらに静けさを感じる。

流れる水は一本の線になり、風に揺れる草木はやわらかな気配だけを残す。

目の前の景色が変わったのではない。時間の感じ方が変わったのだろう。

以前に、滋賀県のびわ湖で練習をしたことがあるが、その時は、まだそこまでの知識はなく、感覚で撮影をしていた。

普段、僕たちは一瞬一瞬を積み重ねながら生活している。だから、写真もその一瞬を切り取るものだと思われている。

しかし、スローシャッターは一瞬ではなく、数秒という時間そのものを一枚の写真に重ねていく。

そこには、人の目では見ることのできない時間の流れが静かに記録されていた。もちろん、思い描いたようにはいかないカットもあった。

風が吹けば葉が大きく揺れ、水面には思わぬ波紋が広がる。

失敗と言えば失敗なのかもしれない。でも、その風も、その揺れも、その瞬間にしか存在しなかった時間の一部だったはずだ。

写真は、思いどおりに世界を作り変えるためのものではない。世界に流れている時間へ耳を澄ませ、その存在に気づくためのものでもある。

今回の挑戦で改めて感じたのは、スローシャッターは派手な表現を生み出す技法ではなく、時間と向き合うための手段だということ。

流れる水を美しく見せたかったわけではない。その場所に流れていた、静かな時間を一枚の写真として残したかったのだ。

シャッター速度に関係なく、僕が写し続けたいものは今までとは何ら変わらない。

目の前の景色ではなく、その場所に静かに流れている時間。そして、その写真を見た誰かが、ほんの少しだけ立ち止まって、静かな時間を感じてもらえたなら、それは僕にとって何より嬉しい一枚になる。

普段見慣れている町が撮り方を変えるだけで、これほどの静けさが隠れていたとは。

ファインダーをのぞいていると、いつも見ていた宇治の景色が、少しだけ違って見えた。

写真は時間を止めるものではなく、流れ続ける時間を感じるためのもの。

その静けさを、これからも写し続けていきたい。

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忙しない日常に、ほんの少しの静かな時間。

色のない日常の街は、心に『余白』をつくります。

静けさ、余韻、余白のある写真。その一枚一枚が、あなたの心の中の静けさを映し出します。

その世界を、作品ギャラリーでゆっくりとご覧ください。

そっと、静かな余韻の中へ。

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写真家リョウ

世界には『存在』として見える瞬間と『時間』として残る静けさがある。カラーとモノクロという並行する視点から一つの世界に宿る“核(coa)”を写しています。京都と東京で『存在』と『静かな時間』を撮り歩いています。

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