シネマティック写真の静かな魔法|03:色彩のトーンが語ること

ほんのり暗く、青みがかった窓越しの午後。

あの日、僕の感情を映したのは、たったひとつの“色”だった。

シネマティック写真を撮るときに、とても重要な『色温度の演出』。

写真にどのような色をのせるかで、その写真のストーリーが大きく違ってくる。

写真にとって色彩は、これまでに自分が歩んできた人生の物語を再現するものだと、僕は思う。

では、シネマティック写真において『色彩のトーンとは何か』について、さらに深掘りしていこうと思う。

色彩のトーンが語ること

シネマティック写真の世界には、「色彩」が持つ物語の深さがある。

それは鮮やかさでもなく目を引く派手さでもなく、むしろ、ひかえめで繊細で静かな余韻を感じる色。

僕が「これはシネマティックだ」と感じる写真には、決まってトーンがある。

そのトーンは、光と構図によって決まり、最終的に色が、“感情を揺れ動かす要素”となる。

写真の中の温度

例えば、同じ場所・同じ構図で撮った写真でも、色のトーンが変わるだけで、その写真が語る物語はまるで違ってくる。

コントラストが強く、影が深く、寒色系でまとめられた写真は、「孤独」や「距離感」を感じさせる。

京都の写真家リョウが撮影したモデル写真
Model / 『葵美月(@aoimzk_)』さん

反対に、やわらかいベージュや淡いグレー、光がにじむような暖色は「優しさ」や「懐かしさ」を呼び起こす。

京都の写真家リョウが撮影したモデル写真

シネマティックな写真を撮るということは、そのときの“空気”や“気持ち”を、色に変換する作業だと僕は思っている。

色彩の選択は感情の選択

レタッチ作業に入るとき、僕はまず「その写真を撮った瞬間にどんな感情があったか」を思い出す。

色温度を少し下げてみたり、グリーンの色味を抜いてみたり、影のトーンを深めてみたり。

色彩を整えるというよりも、写真に“物語”をまとわせるような感覚に近いだろう。

それはまるで、映画監督が色調を決めるように、感情と色が一致したとき、写真は静かに語りはじめる。

映画のような余韻を残す色

映画の世界では、カラグレ(カラーグレーディング)という工程が作品の印象を大きく左右すると言われているのをご存知だろうか。

あの“映画らしさ”の正体の多くは、実はこの色彩のトーンによって作られている。

写真も同じで、撮ったままの色がすべてではない。

自分が何を感じたのか、どんなストーリーをそこに込めたいのか。

その感情を表現するために、色を丁寧に整えていく。

僕が思うに、シネマティック写真の色とは「記憶に近い色」なのかもしれない。

鮮明すぎず、少しだけぼやけていて、でも心にはハッキリと残る。

それはまるで、記憶の奥にそっと触れる“芯(COA)”のような存在だ。

当サイトの『COA-PHOTO』は、まさに『心の芯(COA)まで感じるストーリー性のある写真を届ける』と言う意味が込められている。

次回への静かな歩み

写真における「色彩」は、感情の温度をそっと整える存在。

そのトーンは、静かな映画のように、言葉なく語りかけてくる。

次回は、色や構図とはまた違う“時間軸”に触れるテーマ「動きを止めること、流れを残すこと」について綴っていく。

今日という日も、静かに記憶されていく。

写真という「色」の記憶とともに。

『静かな余韻を楽しむ日常 — A Cinematic Way to Savor the Stillness —』京都の写真家リョウ


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