【写真と物語性】人を惹きつける「映画のような一枚」の作り方

なぜ人は、映画のワンシーンに出てきそうな写真に惹かれるのだろう?

写真を見た瞬間「まるで映画のワンシーンみたい」と、心が揺さぶられたことはないだろうか?

ただ美しいだけではなく、そこに物語を感じるような写真。

「この人物はどんな気持ちでここにいるのだろう?」
「このシーンの前後にはどんな出来事があっただろう?」

そんな想像を掻き立てる写真には、人を惹きつける魅力がある。

写真というものは一瞬を切り取るものだが、その一瞬にストーリーを込めることができるかどうかで写真の印象が大きく変わる。

今回は、僕が最も得意とする『シネマティック写真』のように、「映画のような一枚」を撮るためのポイントを紹介したい。

「映画のようなシネマティック写真」とは何か?

シネマティック写真とは、単に「かっこいい写真」や「おしゃれな写真」とは違う、ストーリー性のある写真である。

たとえば、映える写真とシネマティック写真を比較してみると、次のような違いがあることがわかるだろう。

  映える写真 シネマティック写真
目的

視覚的に美しくSNS映えする

ストーリーや感情を伝える

要素

鮮やかな色。完璧な構図。

余白や影、曖昧さも活かす

魅力

直感的に「きれい!」と感じる

じっくり見るほど味が出る

シネマティック写真を撮る場合は、インパクトを与えたり何かを伝えたりするものではなく、余白や光と影を使って、その写真を見た人が、その写真の見えない背景を想像させることがポイントになってくる。

シネマティック写真に必要な要素

たとえば、映画のワンシーンを思い浮かべてみてほしい。

そこには必ず「登場人物」「シーン」「光」「色」 があることがわかるだろう。

  • 登場人物(被写体) → 表情や仕草が物語を生む
  • シーン(ロケーション) → その場の雰囲気が世界観を作る
  • ライティング(光) → 光と影の使い方で感情を引き出す
  • カラー(ホワイトバランス) → 色が持つ印象で物語を強調する

登場人物(被写体)

シネマティック写真において、登場人物(被写体)とは人物で、その人物の自然な表情や仕草を捉えることで、その写真にドラマが生まれてシネマティック写真となる。

シーン(ロケーション)

シネマティック写真を撮る上でシーン(ロケーション)も重要で、その場の雰囲気がシネマティック写真全体の世界観をつくり上げる。

ライティング(光)

ライティング(光)は、人物の感情をさらに魅力的に見せるためには欠かせない要素。ただ被写体を明るく撮ればいいものではなく、光と影を使って、人物の感情を表現すると、その写真にストーリーが生まれてくる。

カラー(ホワイトバランス)

カラー(ホワイトバランス)は、写真に冷たさや暖かさといった表現をするのに重要な要素で、ロケーションと被写体の感情を的確に表現し、写真をみた人の心を揺さぶる大切な要素になる。

では実際に僕が撮影したシネマティック写真を参考に、シネマティック写真を撮る時のポイントについて話していこう。

シネマティック写真を撮る時のポイント

シネマティック写真を撮るときのポイントとして、光と影を活かすことで写真が映画のワンシーンのようになる。

映画では、登場人物の心情やシーンの雰囲気を光と影で表現することが多い。

だから写真でも、自然光の使い方や影を生かす工夫を意識すると、よりシネマティックな雰囲気になる。

逆光を利用してシルエットを作る → 夕暮れ時の逆光で、被写体の輪郭だけを浮かび上がらせる。

街のネオンや街灯を活用 → 雨上がりの路地で、ネオンの光が濡れたアスファルトに反射するシーン。

大阪で雨の日の撮り歩き

窓から差し込む光を使う → 柔らかい自然光が、被写体の顔の片側だけを照らす演出。

例: 部屋の窓際で物思いにふける女性。差し込む光が顔の半分だけを照らし、もう半分は影に隠れている。 この光の使い方だけで「何かを考えている」印象を強く与えられる。

シネマティックな構図を意識する

映画では、カメラアングルや構図が物語の印象を大きく変える。

ワイドアングルで奥行きを出す → 遠近感を強調することで、映画のような立体感が生まれる。

ポートレート撮影 モデル 大阪

ローアングル・ハイアングルを活用 → 下から見上げると「力強さ」、上から見下ろすと「孤独感」が表現できる。

京都北山で作品撮り

•フレーミングを意識する → 窓(ガラス)越しに撮ると、シーンの臨場感がよりいっそう増して、映画のワンシーンのような写真になる。

ガラス越しに撮った女性モデル

例: ビルのガラス越しに、外を眺めている人物を撮ると、ガラスに映り込む光と相まって、まるで映画の別れのシーンのような雰囲気を作り出せる。

「ストーリー性のあるシチュエーション」を作る

映画は「動き」があるからこそ物語を感じるが、写真でも静止画の中に動きを取り入れることで、そこにストーリー性が生まれてくる。

歩く、振り返る、何かを見つめる → その瞬間を切り取ることで、写真の前後に物語を想像させる。

手元の仕草を撮る →スマホで写真を撮る、コーヒーカップを持つ手、風になびく髪、ジャケットの襟をなおす指先など。ピントを手元に合わせることで、その人の仕草にドラマが生まれてくる。

小道具を使う → 傘、時計、カバン…日常で使うアイテムがストーリーに味付けをする。

雨の日の写真

例: 雨の中、透明傘を持って立ち尽くす女性。 傘についた雨の雫がその写真にウェットな質感をだして、このシーンだけで「何か特別な出来事があったのでは?」と見る人の想像力を掻き立てる。

映画のような色調を作る(カラーグレーディング)

映画には「その作品らしい色」がある。写真も同じで、色調を整えることで印象を統一できる。

ブルー系 → クールで切ない雰囲気(SFやミステリー映画)

東京でモデルMUさんを撮影した写真

オレンジ系 → 温かくノスタルジック(ヒューマンドラマ)

ススキで撮ったポートレート写真

•ダークトーン → 重厚感のある世界観(サスペンスやフィルムノワール)

京都の写真家リョウのシネマティック写真

色温度を変えるだけで、同じ写真でもまったく違う印象になる。 色温度はある程度はカメラ側で設定しておく方がいいが、LightroomやLuminar Neoを使えば自由に調整ができる。

色温度(ホワイトバランス)については、くわしく解説している記事があるので、そちらをご覧ください。

「物語を感じる写真」を撮るためのマインドセット

物語を感じる写真を撮る時は、以下のような要素をイメージすれば、写真にストーリーが見えてくる。

撮影前に「この写真のストーリーは何か?」を考える

「そんなの撮影する時のインスピレーションじゃん」と思うかもしれないが、ある程度、写真のテーマを決めておく方が曖昧な写真にならずに伝わりやすくなる。

視覚的な美しさより「どんな感情を伝えたいか」を優先する

写真を撮るあなた自身がどんな感情を相手に伝えたいのかを明確にすることも、写真にストーリーをつくる大切な要素になる。

一瞬を切り取るのではなく「前後の流れ」を想像する

僕はよく「心が揺さぶられた瞬間を撮る」と言っているが、その前後にはその写真を撮るストーリーがある。

たとえば、この写真。

雨の日に撮り歩きをしていると、雨の音で心がリフレッシュされて、その瞬間に見た景色が僕の心のストレスを和らげてくれた。

シネマティックな写真は、技術だけではなく「意識」 からも生まれてくるもので、写真に込めるストーリーが深まるほど、見る人の心を動かす力も強くなる。

まとめ:あなたにとっての「映画のような一枚」とは?

今回話したように「シネマティック写真」には 物語がある。

光・構図・シーン・色(ホワイトバランス)を意識することで、映画的な雰囲気が写真になって生まれ変わる。

大切なのは「その写真が何を語っているのか?」 を考えること。

あなたの撮る一枚の写真が、見る人の心に残る「映画のワンシーン」になりますように。

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