写真を見たとき、なぜか心に訴えかけられるような感覚を覚えた経験はないだろうか?
特に、ほんのり暗いトーンで表現された写真には、日常の中に潜む美しさや儚さを感じさせてくれる気がしてならない。
以前にも当サイトで話したことがあるニューヨークが生んだ伝説の写真家『ソール・ライター』の写真も暗めで心に響くものがある。
今回は、京都で写真家をしている僕がなぜ、ほんのり暗いシネマティック写真を撮るのか、そしてその背後にあるシネマティックな表現の魅力について話してみようと思う。
ほんのり暗い写真が引き出す感情
明るく鮮やかな写真が流行する中、あえて『ほんのり暗い写真』を撮るのはなぜか?
それは、暗いトーンが視覚的な深みと重厚感を生み、見た人に多様な感情を引き起こすからだと僕は考えている。
例えば、東京の日常でよく見る街並みも、下記のようにトーンを少し落とすだけで心に響くシネマティックな写真になる。
このように、ほんの少し影を落とすことで、普段は気付かない感情や記憶が刺激され、写真を通じて今の自分の心と向き合うキッカッケができる。
日常で疲れた心を癒すためには、こうした非日常的な世界を味わうことも必要で、こういった行動を『リトリート』というが、写真とリトリートには深い関係がある。
ほんのり暗いトーンの役割
ほんのり暗いトーンには、見る人が深く考えさせられる不思議な力がある。
影や静寂、少しの暗さは、まるで心の奥底を覗いているかのような効果を持ち、暗い部分があることで明るい部分が一層際立ち、視覚的なコントラストによって「光と闇の境界」が強調され、感情を揺さぶる力が生まれてくる。
大袈裟かもしれないが、シネマティック写真は人生のストーリーを描いているように思えてくるのは、僕だけだろうか?
撮影現場での工夫と挑戦
ほんのり暗いトーンで写真を撮るためには、撮影時の工夫が欠かせない。
光の当たり方、影の使い方、被写体との距離感、そして周囲の環境とのバランスなど、細やかな要素に気を配らなければならない。
また、ポストプロセスで色調やコントラストを調整しながら、目に見える以上の感情を引き出す工夫も必要だ。
だけど、いつも暗いばかりの写真だけだと写真全体のメリハリがなくなるので、時には朝日が差し込む場所で人物を撮ることもある。
先日に当サイトで公開した、東京国際フォーラムでの写真撮影が、その参考になるだろう。
見る人へのメッセージ
僕がほんのり暗いトーンの写真を通じて伝えたいのは、日常の中にも隠れた美しさや感情があるということ。
もちろん、明るさに満ちた瞬間も素晴らしいが、静かで少し暗い場所にこそ、僕たちが見逃している大切なものがある。
僕の写真が、そのような「見えない感情」に触れるキッカケになればうれしく思う。
最後に
ほんのり暗いトーンのシネマティックな写真は、ただの視覚的な美しさだけでなく、心に響く何かを持っている。
写真を通じて、見る人が自身の内面に問いかけ、何かを感じ取ってくれることが、僕にとって一番の喜びでもある。
だからこれからも、暗さの中に光を見出し、心に残る一瞬を捉えていきたい。
写真家リョウの額装作品
Edition coa#12
日常の中に見つけた
アートな世界。
シンプルで心にゆとりが生まれる
額装写真。
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