雨が洗い流す風景の中で | 02 : 雨音に包まれた香りの記憶

雨はしとしと降っているうちは静かで穏やかな存在だが、雨脚が強くなると、雨そのものが街のノイズのように騒がしく感じることがある。

だけど雨が上がると、そのノイズまで一緒に消えていくのが不思議でしょうがない。

雨上がりには、ほんの少しだけ世界がやわらかな静けさに包まれる時間が訪れる。

そんな静かな時間に出会えたことは、僕にとって、とても贅沢な瞬間だ。

雨上がりの静かな時間に鴨川沿いを歩いていた。

雨がやんだばかりの午後で、まだ空は薄い雲に覆われていて、傘をさしている人もいたたけれど、街の輪郭がくっきりと浮かぶほどの透明感があった。

雨の日の鴨川沿い

ふと立ち止まったのは、白くてふわふわとした花が咲いている場所だった。

雨の日の鴨川沿いに咲いていた花

その、ふわふわした花から、ほのかに甘くて優しい香りが漂っていて、吸い込むたびに心が「すーっ」と静まっていくような感覚。

周りの足音、車の音、人の気配。それほど遠くないはずなのに、心地よい音に聞こえてくる。

そんな中、傘に落ちる雫の音が、雨上がりの主役のように耳の奥で響いていた。

雨の雫

『香りと雨音』。

このふたつだけが、今、この瞬間を満たしていた。

そのふたつから感じる時間はとてもやさしく、何も語らず、ただそこにあるだけで心が温まる。

けっして時間が止まっていたわけじゃない。

でも、心だけがその場に留まり、焦らなくてもいいと思えた。

名前のない花。
一瞬の香り。
雫が奏でた音。

その全てが一つの記憶となって、今も心の奥に残っている。

静けさとは、音がないことじゃなくて、必要なものだけが静かに響いている状態のことかもしれない。

あなたにも、そんな音や香りに包まれた時間があっただろうか。

もし思い出せたなら、それもきっとあなたの中の「静かな余韻」なのだと思う。

『静かな余韻を楽しむ京の町 — When Rain Washes the City Clean —』

シネマティック写真家リョウ
◆Instagram | @ryo_creativephoto / ◆ブランドサイト | 雨の雫

静けさを感じる、もうひとつの世界へ。

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