写真において、髪の毛のレタッチは「美しさ」と「印象」を左右する重要な部分になる。だけど、髪の毛のレタッチはどのようにすればいいのか悩む写真家も多いのではないだろうか?
僕は10年以上美容師として働いた過去があり、他にもデザイナー、アート制作、写真家として活動してきたが、その経歴から髪の流れや質感を重視したレタッチ方法を常に研究している。
本記事では、美容師としての経験を活かして『写真による髪の毛の見せ方』をお伝えしようと思う。
このように、細部へのこだわりが写真全体の完成度を劇的に高めることにも繋がるだろう。
目次
髪の毛の質感が印象を左右する理由
写真における髪の毛の存在は「単なる背景の一部ではない」と僕は考えていて、特にポートレートでは、髪が与える印象がその人の雰囲気や個性を引き立てる重要な役割を果たす。
例えば下記の写真のように、顎ラインにかかる毛先とガラスの天井から差し込む光に照らされた毛束は、細い筆で描かれたような繊細な質感を表現できる。
モデル : MU(ミュー)さん
髪の流れが不自然に見えると、どれだけ肌や目元が美しくても全体のバランスが損なわれてしまうような気がしてならない。だけど、髪の毛が自然で美しく見える写真は、モデルの魅力を最大限に引き出してくれる。
では、人物を撮影する場合は、どのようなポイントに意識を集中すればいいのか。
・光と影を使って髪の質感を作る
・細部までこだわる
ポイント1「毛流れを整える」
美容師時代に最も意識していたことは、髪の『毛流れ』である。
カットをする時、カラーをする時、セットをする時、全てにおいて『美しい毛流れ』を意識してヘアースタイルを完成させることが美容師としての基本。
乱れた毛流れは、ヘアスタイルのバランスを崩すだけでなく、顔全体の印象にも影響を与えるので、この感覚は、写真を撮影する時にも重要なポイントになる。
とは言っても、屋外での撮影になると、少々の風でも毛流れが崩れることもよくあるが、その場合はレタッチソフト『Photoshop』『Lightroom』『Luminar Neo』などで補正するしかなく、スポット修復ブラシやスタンプツールを使いながら、乱れた毛先を丁寧に整えていく。
レタッチをする際に重要なのは、不自然に毛流れを消しすぎないこと。多少の乱れは「人らしさ」があるので、あくまでも不自然に見える部分のみ補正する感じが効果的。
美容師としての視点から髪の動きや重なりを意識することで、自然で美しい写真に仕上げることができる。
モデル : itoiさん
ポイント2「光と影を使って髪の質感を作る」
髪の毛に艶やかな質感を与えるためには、光と影を活用することが必要不可欠で、髪の自然な艶は、ただ色を明るくするだけで再現できるものではない。
例えば、明るさ・コントラスト・ハイライトを調整することで、髪に当たった光の反射をちょうどいい感じに強調することができ、その反対に影となる部分にはシャドウを足すと立体感が出て、平面的な写真よりも心が揺さぶられる写真になる。
この光と影の微妙なバランスも、髪の毛をリアルに見せるコツである。
ポイント3「細部までこだわる」
美容師として何百人もの髪に触れてきた経験から、髪の流れに違和感を感じることがある。
別に「似合っていない」というわけではないが、「顎ラインが綺麗だから髪の流れをこうすると顎ラインが強調されてより魅了的になる」と思うことがある。
こうした細かな違和感を感じた時は、たいてい写真を見る人にも無意識に伝わるので、できる限りその違和感をなくすようにしている。
髪のレタッチする際も不自然に見えてしまわないように、自然な毛の流れをイメージしながら調整することも多い。
それに毛先に動きがある場合は単にその部分を消すのではなく、流れを強調するために描き足すこともある。
美容師の経験を活かす新たな視点
美容師の仕事は、髪の毛一本一本に命を吹き込む作業とも言えるが、その経験を写真に活かすことで、他の写真家とは違った表現が可能になる。
基本的にはモデルさんには触れないが、どうしても髪が乱れてモデルさん自身で直せない場合は、モデルさんの許可をいただいた上で指で髪を直すようにしている。
こうしてレタッチを最小限に抑えつつ、写真の完成度を高めることが秘訣となる。
最後に
髪の毛のレタッチは、写真の魅力をさらに上げるためには大切な工程である。
10年以上も美容師をしてきた経験を活かして「毛の流れ」「光と影」「細部へのこだわり」に集中することで、自然で美しい髪を表現することができる。
写真家としての活動において、この美容師の視点を取り入れることができれば、他にはない価値を提供できるだろう。
髪にこだわるレタッチで、モデルの魅力を最大限に引き出せば、モデルからも喜んでもらうことができて、次回の撮影も受けてもらうことができるだろう。
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