美しい光の線や、シルクのように滑らかな水面を表現するときに欠かせない『長時間露光(スローシャッター)撮影』。
「昼間に長時間露光を試したけれど、画面が真っ白に白飛びしてしまう」
「日中の撮影設定(F値・ISO・シャッタースピード)ややり方が分からない」
とお悩みの方も多いのではないだろうか?
本記事では、昼間・日中に長時間露光撮影を行うための具体的なやり方、おすすめの設定数値、必須機材(NDフィルター)を分かりやすく解説している。
記事後半では、実際に僕が昼天時の琵琶湖で撮影した実践データや作例も公開しているので、ぜひ参考に写真表現の幅を広げてください。
長時間露光撮影とは?(どんな写真が撮れる?)
『長時間露光撮影』とは、シャッタースピードを数秒〜数十秒と遅くして撮影する方法で、「スローシャッター」とも呼ばれている撮影方法。
動いている被写体に残像を残し、滑らかな質感や美しい線の動きを出すことができるのが最大の特徴である。
僕が滋賀県の琵琶湖で撮影した写真で比較してみると、その違いが一目瞭然だ。
まずは、通常の設定(シャッタースピード 1/200秒)で撮影した写真がこちら。

風になびく水面の小さな波が、はっきりと写っている。
続いて、全く同じ場所でシャッタースピードを「2秒」に伸ばして撮影した写真がこちら。

波の立ち上がりが消え、琵琶湖の水面がまるで雲海や霧のように滑らかな質感に変化した。
これが、長時間露光の効果である。
また、夜間であれば車のヘッドライトやテールランプを、光の線として写し出す表現も可能になる。

長時間露光に必要な3つの必須機材
昼夜を問わず、長時間露光を行う際には、次の3つの機材が必須となる。
- 三脚(ブレ防止)
- レリーズ/リモートシャッター(シャッターボタンを押す際のブレ防止)
- NDフィルター(減光用・特に昼間は必須)
1. 三脚(安定した頑丈なもの)
長時間露光の撮影では、カメラをしっかりと固定するための三脚が不可欠だ。

水面や雲を流すような効果を得るには、少なくとも「2秒〜5秒以上」シャッターを開け続ける必要がある。
手持ちで撮影すると100%手ブレしてしまうため、必ず三脚を用意しておこう。

2. レリーズ(リモートレリーズ)
レリーズとは、カメラ本体に触れずにシャッターを切るためのリモコンのこと。

指でカメラのシャッターボタンを押すわずかな力でも、長時間露光では致命的な「押下ブレ」に繋がる。
手ブレを防ぐためにはレリーズを使うか、「2秒セルフタイマー」を活用するといいだろう。
3. NDフィルター(特に日中の撮影で必須)
NDフィルターとは、レンズに入る光の量を減らす「カメラ用のサングラス」のような役割を果たすフィルター。

太陽光が強い昼間にシャッタースピードを数秒まで遅くすると、光が入りすぎて写真が真っ白(白飛び)になってしまう。
そのため、強いNDフィルター(ND64、ND1000など)を装着して意図的に光量を落とす必要がある。
僕が使用しているのは、『ND2-ND400』の可変式NDフィルターで、枠を回すだけで減光量を無段階に調整できるため、刻々と明るさが変わる日中の撮影でも重宝している。

【基本設定】長時間露光のカメラ設定(F値・ISO・SS)
長時間露光の撮影を行う際、一般的にはマニュアル設定(Mモード)になるため、その目安を以下でまとめてみた。
| 設定項目 | 推奨値・目安 | 設定の理由・ポイント |
|---|---|---|
| 撮影モード | Mモード(マニュアル) | 露出とシャッタースピードを固定するため |
| ISO感度 | ISO 100(最低感度) | ノイズを抑え、光の取り込みを最小限にするため |
| 絞り(F値) | f/8 〜 f/16 | 画質を保ちつつ光量を絞る(絞りすぎによる回折現象に注意) |
| シャッタースピード | 2秒 〜 30秒(またはバルブ) | 表現したい被写体(波、雲、滝など)に合わせて調整 |
| 手ブレ補正 | OFF(オフ) | 三脚固定時に補正機能が誤作動して揺れるのを防ぐため |
昼間・日中に長時間露光撮影をするやり方・手順
日中の長時間露光は、夜間に比べてピント合わせや光量調整が難しくなる。
失敗しないために、次の5つのステップを意識するといいだろう。
- 構図を決め、三脚とカメラを強固にセットする
風による揺れを考慮し、足場を固めて三脚を設置する。 - NDフィルターを外した状態でピントを合わせる(AF)
濃いNDフィルターを装着すると画面が暗くなり、オートフォーカス(AF)が効かなくなので、先にピントを合わせた後、マニュアルフォーカス(MF)に切り替えてピントを固定。 - NDフィルターをレンズに装着する
ピントリングを回さないよう注意しながらNDフィルターを取り付ける。可変フィルターの場合は、最小値(ND2)にしておいてから、最大値(ND400、ND1000)にするといいだろう。 - Mモードでカメラを設定する(ISO100 / f11 / SS 5秒〜など)
NDフィルターの濃度に合わせてシャッタースピード(SS)を決定する。 - ファインダーを遮光し、レリーズでシャッターを切る
一眼レフカメラの場合、ファインダーから逆流入する光で白飛びすることがあるため、アイピースカバーや日傘などでファインダーに入る光を防いで撮影。レリーズまたは2秒タイマーを活用するといいだろう。
【実証作例】真夏の昼間に琵琶湖で長時間露光を試した結果
実際に僕が「真夏の午前10時」という、長時間露光には最も過酷な環境(晴天・直射日光)で撮影した作例とデータをご紹介しよう。

【撮影データ】
・シャッタースピード:2秒
・F値:f/16
・ISO感度:100
・焦点距離:18mm
・NDフィルター:ND400相当(可変ND使用)
・使用機材:Canon 7D Mark II / 18-200mmレンズ
撮影環境の詳細は、以下の通り。
- 撮影時間:午前10時頃
- 場所:滋賀県琵琶湖の畔
- 季節・天候:夏・晴天(風はほぼ無風)
直射日光が強く、風も弱いため水面が動きにくい初心者には無謀とも言える環境だったが、NDフィルターで光量を抑え、しっかりと三脚で固定することで静寂を感じさせる写真を撮ることができた。
さらに、もう1枚。
次は、京都府宇治市で長時間露光撮影をした写真。

【撮影データ】
・シャッタースピード:2秒
・F値:f/11
・ISO感度:100
・焦点距離:18mm
・NDフィルター:ND400相当(可変ND使用)
・使用機材:Canon 7D Mark II / 18-200mmレンズ
撮影環境の詳細は、以下の通り。
- 撮影時間:午前10時頃
- 場所:宇治沿い
- 季節・天候:夏・晴天(風はほぼ無風)
晴れ・日中に長時間露光を成功させる「ちょっとしたコツ」
晴れの日にどうしてもハレーション(白飛びやフリーズ現象)を起こしてしまう場合は、以下のポイントを試すと、ハレーションを抑えれる。
1つ目は、日陰(大きな木の影など)に三脚を立てて撮影すること。
直射日光が直接レンズに入るのを物理的に防ぐだけで、ハレーションを大幅に抑えられる。

2つ目は、先述した「ファインダーカバー」や「日傘」でファインダーを遮光するのも効果的だ。
特に明るい昼間はファインダーから光が逆流入し、露出が狂う原因になる。
付属のファインダーカバーや、日傘を使うだけでも全然違ってくる。
モノクロに加工する現像ツールについて
そしてここで、軽く現像についても触れておこう。
ここで見ていただいたモノクロ写真は、全てSkylumの『Luminar』で世界観を整えている。
※2026年8月に『Luminar Neo』から『Luminar』に名称変更されました。
Luminarを使っている理由は、アートな写真を設計するのに向いているからだ。
PhotoshopやLightroomでも作れなくはないが、同じ工程を何度も繰り返す時間を無駄に思えて、その時間を世界観調整に使いたかった。
Luminarの優れているところは、同じ下地調整をたった数回の手順で全ての写真を整えることができるところ。
AI機能が進化し、現像の中で「同じ工程を繰り返すだけ」の作業を取り除いて、世界観設計に集中できる。これが、Luminarを使っている一番の理由だ。
もしあなたが「現像に慣れて、毎回同じ工程を繰り返す時間が勿体無い」と感じたなら、Luminarという選択肢も考えてみてはいかがだろうか。
まとめ:長時間露光で自分だけの「静けさ」を表現しよう
今回、僕が長時間露光撮影に本格的に挑戦した背景には、世界的な写真家マイケル・ケンナ氏が表現するような「圧倒的な静けさと余白」をモノクロ写真に取り入れたいという強い想いがあったからだ。
長時間露光(スローシャッター)は、目に見える世界とは異なる「時間軸の静寂」を写真に収めることができる素晴らしい技法。
ぜひ本記事で紹介した設定や手順・NDフィルターの使い方を参考に、日中のスローシャッター撮影にチャレンジしてみてほしい。
なお、写真家リョウ(僕)おポートフォリオサイトでは、「静けさ×雨」をテーマにブルー調のモノクロ作品を公開している。
僕が追求する写真表現の世界感を、ぜひこちらも併せてご覧いただければ幸いです。
