モデルに依頼してポートレート撮影を始めると、どんどん魅力的な写真を撮りたくなってきます。
そこで「モデルを魅力的撮るにはどうすればいいの?」とか「モデルはどんな写真を撮ってもらうのが嬉しいんだろう?」と悩む時期がやってきます。
でもその悩みはとても良いことで、ポートレート撮影の技術向上のモチベーションに繋がります。
そこで今回は、「魅力的なポートレートを撮る方法」についてシェアしたいと思います。
僕がいつもポートレート撮影で意識していることは、次の2つ。
- 構図を意識する
- 単焦点レンズで撮る
と言うことで、モデルさんと楽しくポートレート撮影をするための参考にしてみてください。
目次
構図を意識する
「構図」とは、絵画や写真の仕上がりをイメージして、被写体や背景などをどこに配置するのかを考えながら作品全体をつくり上げていくこと。
この「構図」を意識せずに「なんとなく」で写真を撮ると、全体にまとまりのない写真になってしまいます。
例えば、背景の奥行きをどれくらいだして被写体をどう際立たせたいのかなど、作品の仕上がりをイメージして全体のバランスを考えて撮影することが魅力的な写真につながります。
ポートレート撮影に慣れていない人ほど、構図を意識しながら撮影することが大事だと僕は考えています。
構図を意識することで「この写真家だから撮れる魅力的な写真だ」と差別化することができます。
ポートレートの魅力的な構図
魅力的な構図と言っても、そこまで難しく考える必要はなく、構図の基本さえわかれば「自分らしいアートな写真」を撮ることができます。
ポートレート撮影でよく使われている構図をまとめると、次のような感じになります。
- 三分割構図
- 思いきった構図
この2つを意識するだけで、ポートレート写真の魅力をさらに上げることができます。
構図には「黄金比を意識した構図」だったり「日の丸構図」だったり、色々な構図がありますが、そういった構図は複雑だったり誰にでも撮ることができる写真になってしまいます。
なので今回は、僕がよく使う「三分割構図」と「思いきった構図」の話をします。
アートな写真を撮りたい人、ドラマチックな写真を撮りたい人に向いている構図なので、ぜひ意識してみてください。
三分割構図
三分割構図とは、縦横を均等に三分割した線上や交わる点の部分に被写体の見せたい部分(中心部)を配置する構図です。
下記の画像は、縦横を三分割してグリッド表示したイメージ画像です。
縦横のラインが交わる部分(点)に被写体の一番見せたい部分を配置すれば、ストーリーを想像させる写真を撮ることができます。
では、縦横のラインのグリッド表示を消してみましょう。
この「三分割構図」を意識して写真に余白をつくることで、写真のバランスが安定してその余白に「何かの意味がある」と想像させることで、写真にストーリーが生まれます。
ちなみに被写体を中央に配置した場合を見てみましょう。
なんだか記念写真っぽく感じませんか?
もちろん、このような構図もよく使われる構図で、中央に被写体を配置することが悪いわけではありません。
この構図を「日の丸構図」と言いますが、主に記念写真や成人式、卒業式、結婚式の撮影でよく使われる構図です。
日の丸構図は意図的に使うならいいですが、ポートレートで日の丸構図を使うと作品らしさがなくなって、記念写真っぽくなってしまいます。
日の丸構図については、この後の項目で少し触れているので、そちらを参考にしてください。
三分割構図の作例
では、実際に僕が「三分割構図」を意識して撮影したポートレート写真をご覧ください。
下記の写真は、大阪の中之島で『進撃のまりりん(@attack_maririn)』さんをモデルに、僕が撮影をさせていただいた写真です。
ぴったり三分割構図に当てはめる必要はなく、縦横を均等に三分割した左の線上(イメージで)に配置するだけで良いです。
次の写真では、縦横を均等に三分割した右側の線上(イメージで)近くにモデルさんを寄せて撮影しました。
三分割構図を意識することで自然と『余白』の部分ができてストーリーが想像できる写真になります。
思いきった構図で撮る
「思いきった構図」とは、ポートレート撮影の時に息抜きに色々な角度や変わったフレーミングで撮る写真で、僕が勝手に呼んでいる構図です。
要するに「息抜きするための遊び心のある構図」です。
モデルさんにポートレートを楽しんでもらうために、遊び心を出した「思いきった構図」で撮るとお互いのモチベーションが続くんです。
ポートレート撮影をするときは、数枚撮影したらそれをモデルさんにもチェックしてもらうのが一般的です。
そんな時、同じようなパターンの写真ばかり見せられては、モデルさんもチェックするのに疲れてきます。
30分に1回とか数十枚に2〜3枚程、遊び心の入った構図で撮影することでモデルさんの気分転換にもなるし、写真家のアイデアにも繋がります。
それでは「思い切った構図」の作例をご覧ください。
斜めの構図でポートレート
例えば、このような斜め構図も面白いですよ。
スマホで写真を撮るのが好きな人はよくこのように斜めに撮ることが多いですが、人物を入れたポートレート撮影では、平衡感覚に違和感が出るのであまり斜めに撮ることはありません。
友達同士で写真を撮る場合には、面白い写真になるので斜めの構図も使ってみるのはありです。
僕はあまりカメラを斜めにして撮ることはありませんが、今回のモデルさんのアクティブな動きに合わせて斜めの構図で撮ることで面白い動きが表現できます。
YouTubeでダンス動画を公開しているモデルさんでもあるので、動きに飛躍感を感じますね。
ベタ付き構図でポートレート
地面に横になるモデルさんと同じ目線になるように、写真家もベタ付きしてポートレート撮影をした構図。
この撮り方をする時はモデルさんも写真家も横になる必要があるので、人通りが無く邪魔にならないように短時間で撮るようにしましょう。また衛生的なことも考えて、シートを常に持っておくことをおすすめします。
地面にベタ付き構図で撮る場合は、モデルさんにこの構図で撮影してもいいか確認をすること。
そして多くの人が歩く場所になるので、衛生面を考えてレジャーシートを準備しておくこと。
このベタ付き構図の基本は、モデルさんに寝てもらうものではなく、立っている(座っている)モデルさんをローアングルから撮る時に使うのが一般的です。
モデルさんによっては「ローアングルがNG」という人もいるので、事前に確認しておきましょう。
差し色を入れる構図
普通なら橋に避けるだろう、赤色の三角コーンと一緒に撮ったり。
モデルさんによっては、自らアイデアを出してポージングをしてくれる人も多いので、写真家の要望だけを伝えて撮るのではなく、モデルさんのアイデアも取り入れると喜んでもらえます。
下に大きく余白をつくった構図
こちらの写真はモデルさんを小さめにして、下に余白を大きく入れた写真です。
僕はこの構図のことを『ちょこん。の構図』と呼んでいます。
モデルさんを小さく『ちょこん。』と入れて、余白を広めに撮る構図。
この構図もよく使いますが、手前にボケ感を出してモデルさんを小さく撮影することで、遊び心はあるけどどこか魅力的な写真になります。
おまけ-日の丸構図-
日の丸構図とは、日本の国旗の中央に赤い丸があるように被写体を真ん中入れる構図のこと。
日の丸構図は左右対称でバランスは良いのですが、何も考えずに真ん中にモデルさんを入れて撮影すると、ただの記念写真になってしまいます。
日の丸構図で撮る場合は、そこにどんなドラマを想像させるかを考えながら撮ってみましょう。
余白を入れた構図で撮る
そしてポートレートを魅力的に見せる次のポイントは「余白を入れた構図」です。
先ほども説明したように、余白をつくることでストーリーのある写真になります。
余白は写真全体のバランスを整えたり、余分なモノを入れないことで被写体に目がいきやすくなります。それだけじゃなく、余白はその写真を見る人の想像を膨らませる効果があります。
たとえば、先ほどとよく似た、こちらの三分割構図の写真を見てください。
モデルがなぜその方向を向いているのか、「この余白にはいったいどんなストーリーがあるのだろう」と気になって想像が膨らみます。
三分割構図を意識すると、自然にこういった余白ができますが、その余白をどう演出するのかを考えて撮影するのも楽しいものです。
あえて余白のある方に背を向けてもらったり。
余白をつくることで、建造物の壮大な感じを演出することもできます。
ここまでの「構図」「余白をつくる」を意識するだけでも、シネマティックで魅力のあるポートレート写真を撮ることができます。
さらに光と影をうまく使えば、今話題になっている「エモい写真」にすることもできます。
エモい写真の撮り方については、下記で解説しているので読んでみてください。
では次に、モデルさんに喜ばれる「単焦点レンズ」について話していきたいと思います。
85mm単焦点レンズの魅力
構図についてイメージができてきたら、次はモデルに喜んでもらえる「単焦点レンズ」についても知っておくと、ポートレートの魅力がどんどん上がります。
単焦点レンズには「35mm、50mm、85mm、135mm…」など色々ありますが、初心者にも使いやすくモデルに喜ばれる写真が撮れる「85mm単焦点レンズ」についておお話しします。
ネットなどで「ポートレート撮影、おすすめレンズ」と検索すると「50mm、85mm単焦点レンズがオススメ」と言う記事をよく見かけます。
標準レンズに比べると写真も明るく、背景を綺麗にぼかすことができてモデルを魅力的に目立たせることができきるレンズ、それが「85mm単焦点レンズ」なんです。
モデル界隈でも、「85mm単焦点レンズなら綺麗に撮ってもらえる」と安心する人もいるくらい人気の高い単焦点レンズ。
単焦点レンズの作例については、下記の記事で詳しく話しています。
85mm単焦点レンズで撮った写真
こちらが、85mm単焦点レンズで撮影したポートレート写真です。
85mm単焦点レンズを使い、カメラの「F値」の数字を小さくするつまり「解放」で撮ることで光を多く取り込むことができて明るい写真になり、背景に柔らかいボケ感が出てモデルを際立たせることができます。
ちなみに「F値」の数字を大きくする場合は「解放」ではなく「絞る」と言います。
F値を絞ると光を取り込む量は少なくなりますが、背景にもピントが合うので、ワイドな風景写真を撮りたい場合やモデルも背景もボカさずに撮りたい場合に絞り気味で撮ります。
街中でポートレート撮影をする場合は、F値を解放にして背景にボケ感を出すことで、周りの人の顔をぼかすことができるので、肖像権を守ることもできます。
標準レンズと単焦点レンズの違い
下記の写真は、15-85mm標準レンズで撮影した写真です。
15-85mmの焦点距離85mmでズームした場合の、一番小さなF値(解放値)は『5.6』。
F5.6(解放)は室内撮影では明るさが足りないため、ISO感度を上げて撮りました。
この時のISO感度は「1600」。これでも、背景に少しボケ感は出ていますね。
最近の一眼レフは、ISOを上げてもそれほどノイズが気になることはありませんが、商品撮影を撮る場合は、できるだけISO400までに抑えたいところ。
室内で「15-85mm標準レンズ」を使うなら、ストロボは欲しいですね。
そして下記の写真は、85mm単焦点レンズで同じものを撮影した写真がこちら。
85mm単焦点レンズのボケ感は半端なく、柔らかいボケ感が出るのでポートレート撮影の場合はとても魅力的です。
この時の設定は、僕が持っている85mm単焦点レンズの最小のF値である「F1.8」。
標準レンズとは違い、F値の数字が小さく(解放に)なる分、室内でも明るくなるのでISO感度を下げました。
この時のISO感度は「160」。
ただ望遠レンズのようにレンズリングでズームや引きができないため、自分自身が動いて調整する必要がありますが、自らが動いて構図を決めることも撮影技術の向上につながります。
85mm単焦点レンズはモデルとちょうど良い距離感
そして、85mmの単焦点レンズはモデルさんとの距離感がちょうどよく、近すぎてモデルさんに威圧感を与えることもなく、遠すぎて話が聞こえない距離でもないのでとても使いやすいレンズです。
それに望遠レンズに比べて明るく撮ることもできて、背景に「玉ボケ」を入れて可愛らしい写真にすることもできます。
玉ボケとは、背景が丸くボケている状態で、このような背景のボケ感です。
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ポートレート撮影でエモい写真を撮るなら、50mmか85mm単焦点レンズを持っておくことをオススメします。
望遠レンズと単焦点レンズの使い分け
ポートレート撮影をする場合に望遠レンズを上手く使うコツは、空を広く撮って壮大な感じを出したい時や、モデルさんとの距離をキープしながら顔のズームを撮りたい時、狭いスタジオでモデルさんの全身を撮りたい時などは望遠レンズを使います。
単焦点レンズを上手く使うコツは、とくに屋外のポートレート撮影で単焦点レンズの効果を発揮することができます。
例えば狭くて薄暗い街中で撮影する場合、モデルさんとの距離を取ることが難しい場所では50mmの単焦点レンズを使いますが、あまり近すぎると嫌がるモデルさんもいます。
そんな場合に、ある程度の距離感が保てる85mmの単焦点レンズを使う方がモデルさんにも安心してもらえます。
85mm単焦点レンズのメリットをまとめると、次のような感じになります。
- 会話が聞き取れるくらいの距離
- 安心されやすい距離感を保てる
- 明るくエモい写真を撮ることができる
一方で、85mm単焦点レンズのデメリットをまとめると、次のような感じになります。
- ズームリングがないので自分自身が近づいたり離れたりしなければいけない
- 室内撮影では距離が足りないことがあるので屋外の使用がメインになる
- 少し値段が高い
最後に
今回は、ポートレートを魅力的に見せるための構図と、単焦点レンズを使えばモデルさんも喜んでもらえるという話をしてきましが、イメージできたでしょうか。
・三分割構図
・思いきった構図
・余白をつくる
この3つを意識してポートレート撮影をするだけで、一気に魅力のある写真を撮ることができます。
ポートレート撮影を続けていると「なんか違うなぁ」と思う時が出てきます。
だけど、それは写真技術がどんどん上がってきている証拠で、そこから自分らしい構図を見つけることが大切です。
そして「85mm単焦点レンズ」を使うことで、モデルを魅力的に見せることができて喜んでもらえます。
Canonの50mmや85mmなら、そこまで高い買い物ではないので、どちらか1台持っておくといいでしょう。
「でもやっぱり予算的に厳しい」
という場合あるかもしれません。そんな時は、中古のカメラやレンズを検討してみてください。
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下記の僕が運営している芸術系のブログで、中古カメラを購入した感想を書いた記事があるので、そちらを参考にしてみてください。
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