ホワイトバランスの基本 | 色温度を理解して写真の魅力を伝える方法を解説

一眼レフの撮影に慣れてくると、ホワイトバランスの設定に悩まされることがあります。

ホワイトバランスの設定によって写真の魅力が大きく違ってくるので、写真家にとってはとても大切な知識です。

そのホワイトバランスの基本がわかれば、自分らしいオリジナリティーのある写真を撮ることができます。

ホワイトバランスを自由に扱えるようになれば、もっと写真の表現の幅が広がりますよ。

ホワイトバランスとは

ホワイトバランスとは、撮影する場所の環境や作品イメージに合わせて「色温度」を補正する一眼レフの機能です。

ホワイトバランス(色温度)の基本的な考え方は「白を白く写すために補正する機能」と言うもの

それ以外の考え方は、イメージしている世界を表現するために、赤味を強くして夕日っぽくしたり青味を強くしてクールでオシャレな写真にする使い方もあります。

ホワイトバランスを補正するだけでも、写真の印象がかなり違ってきます。なので、作りたい写真のイメージに近づけるため、何度もテスト撮影しながら色温度を決めていきます。

ぜひ「なぜイメージした色味がでないんだろう?」と悩んだときの参考にしてください。

ホワイトバランスの種類

まず一眼レフのホワイトバランス(色温度)には以下のような種類があり、それぞれ数値で目安が決められています。


出典 : Canonサイトより

上記のCanonのサイト上にあるホワイトバランスの表の、『アイコン(表示)』『モード』『色温度』にはそれぞれの関係性があり、それを理解することで撮影する場所の環境に合わせたホワイトバランスでイメージしている写真を撮ることができます。

最終的には「手動ホワイトバランス」で撮影ができるようになるのが理想ですが、慣れていない間は設定に時間が掛かってしまいます。

なので、上記の表を参考にしてホワイトバランスの色味を理解し、それを手動で設定できるようにした方がいいでしょう。

ちなみに僕は、作品撮りをするときは「K」モード(手動)を使っい、時間が少ない撮影やスナップ撮影の時は「太陽光」を使っています

それではCanonのホワイトバランスを参考にして、その違いについて見ていきましょう。

オート(3000〜7000K)

『オートホワイトバランス(AWB)』モードは、カメラが自分で周りの光の色温度を測定し、白く写そうと自動で調整してくれる機能です。

一眼レフを持ち始めて撮影に慣れるまでは『オートホワイトバランス(AWB)』で撮影をすることが多いと思いますが、自動で色温度を補正してくれるので、とても便利なモードと言えます。

ですが、いつまでも『オートホワイトバランス(AWB)』モードに頼っていると、撮影技術を上げることはできません。

ある程度ホワイトバランスの基本が身についてきたら、後途で説明する『K(ケルビン)』モードで撮影技術を上げることが大切です。

太陽光(5200K)

『太陽光』モードで撮影すると、気持ち青よりの写真にすることができます。

一眼レフを使っている人の中には、撮影する時に『太陽光』モードだけで撮影している人も多く、曇りの日は青っぽく、夕方に撮る写真は赤っぽくなるため、オートホワイトバランス(AWB)モードよりも使いやすいのが特徴です。

撮影する時の環境(色温度)を、そのまま表現したい場合は『太陽光』モードで撮影をすると良いでしょう。

日陰(7000K)

『日陰』モードは、晴れた屋外の日陰に適しているホワイトバランスのモードです。

屋外の日陰で撮影をすると光が青っぽくなってしまうため、赤味を増やして白に近づけたい時に適しています。

曇り(6000K)

『曇り』モードで撮影する場合は、曇りの日も晴れた屋外の日陰と同じように青っぽくなってしまいます。

日陰モードは、主に晴れた日の日陰に適していますが『曇り』モードは、名前の通り曇り空の下での撮影に適しているモードです。

白熱電球(3200K)

『白熱電球』モードは、日陰モードや曇りモードのように赤よりに補正するのとは逆に、青っぽく補正したい時に向いているホワイトバランスモードです。

室内で『白熱電球』モードで撮ってみるとわかりますが、かなり青みが強い写真になってしまいます。

屋外で雨の日の撮影などで使うと面白い効果が出て、特に、適正露出から『-1』程度下げて暗めに撮影すると、雨っぽくドラマチックな写真にすることができます。

白色蛍光灯(4000K)

『白色蛍光灯』モードは、蛍光灯の下で撮影する場合に適したモードです。

蛍光灯は、人の目には見えないくらい『緑色』光を放っていて、その緑色を補正して白っぽくするためのモードが『白色蛍光灯』モードです。

室内の蛍光灯の下で撮影をする場合に適しているホワイトバランスモードになります。

マニュアル(2000〜10000K)

『マニュアル』モードは、上記のようにそれぞれの環境に合わせて設定すれば適正な光に補正してくれるものではなく、白い紙やグレーカードと言われるものを事前に撮影し、それを基準に自分自身で色温度を決めて撮影するホワイトバランスモードです。

下記がグレーカードと言うものです。

マニュアルモードで撮影をするメリットは、撮影する日の環境に合わせて忠実にホワイトバランスを再現することができると言う点です。

さらにホワイトバランスの基礎が身につくので、撮影技術の向上にもつながります。

色温度(2500〜10000K)

『色温度(ケルビン)』モードで、イメージしている光の色温度を再現できるようになれば、もうプロの写真家と言ってもいいでしょう。

これまで、各モードの名称の括弧内に記載している数字が気になりませんでしたか?

例えば、『色温度(2500〜10000K)』や『太陽光(5200K)』となっていましたね。

この『K』とは『ケルビン』の頭文字にで光の色を表す単位であり、青を強く出したい場合は数字を小さく、赤を強く出したい場合は数字を大きくすることで、色温度の補正をすることができます

この『K(ケルビン)』の特徴を抑えれば、光を操る写真家になることができます。

僕は、光の色温度に瞬時に対応できるようにするため、常に『K(ケルビン)』モードで撮影をしています。

もちろん、

「イメージより青が強すぎた」

となる場合もありますが、撮影の技術を上げるためには一眼レフは全てマニュアルで撮影をしています。

ホワイトバランスの色温度

ホワイトバランスを操れるようになるためには、色温度(ケルビン)の仕組みを知ることも大切です。

ケルビンと数字の関係は、下記の画像のようになります。

ホワイトバランス 写真家リョウ

この画像は『白っぽくする』ことを基準に考えて解説しますね。

まず『自然界の光の色味』が、赤よりなのか青よりなのかを見極めるところから考えてみましょう。

『自然界の光の色味』とは、撮影する場所の自然の光の色味ということですね。

例えば、春の晴れた日の午後4時ごろに撮影をしたとしましょう。

自然界の光の色味は、太陽が沈み始める時間で晴れた日は特にオレンジ色の光が強くなりますね。

ということは、上の図で見ると『自然界の光の色味』は赤が強くなって3000Kくらいになるかもしれません。

夕日の色を忠実に再現するなら、5600K(メモリの中央)で撮れば忠実な色味の写真が撮れます。

もし、夕日の色味をもっと強調したければ、『一眼レフで設定する色温度』を6000〜7000Kに合わせて赤を強くすれば良いのです。

逆に赤みを抑えたいのであれば、『一眼レフで設定する色温度』を3000〜4000Kに合わせて青で補正してあげれば良いのです。

青み

青みを強くしたい場合はK(ケルビン)の数字を小さくして、とくに「雨の日」「青空」「クールでオシャレな写真にしたいとき」「憂鬱な感情を表現したいとき」「夜」などのシチュエーションで使うと魅力が出ます。

青色は『朝日』『涼しげ』『冷たい』『爽やか』『憂鬱』といったイメージがあるため、そのような表現をイメージしている写真は青みを強くしてみると効果があります。

例えばこのような写真を撮るときは、青寄りにした方が雨らしく憂鬱な感情を表現することができます。

赤み

赤みを強くしたい場合はK(ケルビン)の数字を大きくして、「夕暮れ時」「黄金色に広がる草原」「暖かな写真にしたいとき」「懐かしさをアピールしたいとき」「レトロでオシャレな写真にしたいとき」などのシチュエーションで使うと魅力が出ます。

赤色は『夕暮れ』『暖かい』『暑い』『懐かしい』『優しい』と言ったイメージが持たれやすいため、レトロでドラマチックな写真に向いています。

例えばこのような写真を撮るときは、赤みを加えた方が夕日らしさを表現することができます。

ホワイトバランスの作例

ではここで、僕がケルビン(K)モードで撮影している写真を見てもらいながら、どんな環境の時に青みと赤みを使い分けているのかを解説したいと思います。

雨の日のポートレート

雨の日の写真 写真家リョウ

まず僕の写真の特徴でもある、雨の日のポートレート撮影では、ホワイトバランスは『青より』にしています。

いつも『K4900』を基準にして、撮影してみて青が強ければK5200あたりに設定して、青が足りなければK4000まで下げることもあります。

青よりにすることで、より雨の日らしく憂鬱な感情を表現することができます。

雨の日のポートレート撮影は透明傘があれば、さらに魅力が増します。

雨の日のポートレート撮影。定番の透明傘でシネマティックな写真に撮るコツ。

ススキが広がる金色の草原

シネマチック写真 写真家リョウ

夕日の色をそのまま生かしたかったので、最初はホワイトバランスをK5600で撮ったのですが、もっと金色の世界観を出したくてK6000まで上げて撮りました。

雨の日の写真もススキの写真もLightroomで質感を作っていますが、ホワイトバランスは一眼レフの設定のまま。

僕はこういった、映画のワンシーンのように心を揺さぶる魅力的な写真を意識して撮影するようにしています。

一眼レフで喜ばれるおしゃれな人物写真の撮り方。シネマティック写真とは?

撮影時にホワイトバランスを決める

ここまでホワイトバランスについて話してきましたが、

「Lightroomでレタッチするしそこまで気にしなくていいんじゃない?」

と思っている人もいます。

だけど、仕事として写真を撮影している人はわかると思いますが、撮影時のホワイトバランスがイメージ通りじゃないとレタッチで補正するのに限界があります。

Lightroomのホワイトバランスの補正をしてみるとわかりますが、写真全体の色味が変わってしまってバランスよくイメージ通りの色温度にしようとするととても時間が掛かります。

最悪の場合は、Photoshopで部分的に色温度の補正をする必要もあります。

さらにLightroomのホワイトバランスに頼ってしまうと、一眼レフの撮影技術もなかなか上げることができません。

できる限りカメラの設定でイメージしている写真を撮影して、Lightroomのレタッチは肌の補正や質感を整える『味付け』として考えておく方が良いでしょう。

まとめ

今回はホワイトバランス(色温度)の基本について話してきましたが、色温度を理解することで魅力的な写真を撮ることができます。

それぞれのシチュエーションに合わせてホワイトバランスを設定し、自分らしい色温度の世界観を作ることで、写真家としての魅力を上げることもできるでしょう。

今よりも一眼レフの撮影技術を上げたいと考えているのなら『AWBモード』でカメラに頼らず、『K(ケルビン)モード』を使って撮影する場所によって手動で設定できる方が写真の幅も広がります。

そしてLightroomやPhotoshopでレタッチをする場合は、『味付け』程度に考えておく方がいいでしょう。

一眼レフのホワイトバランスが理解できると、アートな写真を撮ることもできて楽しくなってきますよ。