雨の日のポートレート撮影。定番の透明傘でシネマティックな写真に撮るコツ。
「せっかく魅力のあるモデルさんとのポートレート撮影なのに雨が降って残念!」なんて思ってませんか?
実は雨の日にポートレート撮影すると、写真にストーリー性が出てシネマティックになって、見る人の心に伝わりやすい写真になります。
※「シネマティック(シネマチック)写真」とは、「映画のワンシーンような」とか「映画っぽい」と思える写真のこと。
なので、ポートレート撮影の当日が雨でも残念がらずに、雨らしい憂鬱な表現を写真にすればいいんです。
ということで、今回は雨の日のポートレート撮影の魅力を上げてくれるアイテムや、シネマティックに見える構図についてお話ししたいと思います。
雨の日の写真を撮ることが多い、アート×写真家の僕の撮り方をシェアするので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
雨の日はポートレート撮影に集中できない
「雨の日のポートレート撮影は一眼レフが濡れて故障しないかが気になって集中できない」という人も多いでしょう。
そこでまず僕が雨の日のポートレート撮影に集中するために、いつも意識していることをお話しします。
僕の考え方は、撮影当日が雨だからといってその日にモデルさんにキャンセルをするのは失礼だと思っています。
できることなら、雨でも予定通りポートレート撮影をする方が、モデルさんにとっても嬉しいもの。
そこで雨の日のポートレート撮影に集中できる方法が、撮る側(写真家)に屋根があってモデル側に雨の中で傘を差して撮影ができる場所。
たとえば高速道路の高架下や電車が走る高架下など、その他にもいろいろありますが、そのことについてはこちらの記事を読んでもらうといろいろアイデアが浮かびます。
雨の日ポートレートの定番は『透明傘』
雨の日ポートレート撮影をするとき、僕は必ず撮影ように買った「透明傘(ビニール傘)」を持っていきます。
透明傘がポートレート撮影に使える理由は次の3つ。
- 透明傘は顔に影ができにくい
- 透明傘越しでモデルさんを撮る事ができる
- 雨粒のついた透明傘はシネマティックな写真になる
それでは1つずつご説明しますね。
透明傘は顔に影ができにくい
雨の日のポートレート撮影で透明傘を使うのは、顔に影ができにくいのが理由の1つです。
雨の日は周りの環境が薄暗くなるため、色付きの傘だと顔が暗くなってしまうんです。後ほど、色付きの傘で撮影した写真も公開しますが、色付きの傘だと顔に不自然な色の影もできてしまいます。
傘の色によっては、モデルさんの顔色が悪く見えたり。その点、透明傘だとほんのりした光でも傘越しに入ってくるため、自然な雨の日らしい明るさで写真を撮ることができるんです。
透明傘の持ち方
モデルさんに透明傘を持ってもらう場合、肩に中棒と言う柄の部分を乗せてもらうと自然なポージングになります。
もし写真家に正面を向いて撮ると、透明傘の奥行き感が出にくくなったり、傘の形が神様の後ろの光みたいになってしまいます。
宣材写真や記念写真を撮る場合は、正面でカメラ目線でもいいかもしれません。だけどシネマティック写真にするには、あえてカメラから目線や体を外す方が、そこにストーリーを想像する楽しさを感じてもらえます。
透明傘を肩に乗せて撮る時は、写真家から見て奥の肩に柄の部分を乗せてもらい、斜め『45°〜90°』くらい横に向いてもらうと、綺麗なアゴのラインが見えて憂鬱な感情に見えて雨らしい写真になります。
色付きの傘の場合
どうしても色付きの傘を使いたい場合は、赤い傘がオススメです。赤は雨の日の環境の中だと差し色になるので、写真にメリハリをつけることができてアートな写真になります。
ただし赤い傘の場合は、顔に赤い影がつきやすくなるので、持ち方に工夫をする必要があります。例えば、顔に傘の赤い影ができないようにモデルさんの顔前方から光が当たるようにしたり。
赤い傘の後方や真上から光が当たると、顔に赤い影が入ったり、レタッチするときに色補正がしにくくなります。
他には、赤い傘を高く上げて子供のように雨の中ではしゃぐような表現をしたり。
赤い傘を高く上げてもらうことで、真上からの光でも顔に赤い影ができるのを防ぐことができます。
このように、持ち方や光の当たり方を工夫すれば、赤い傘も雨の日の撮影には効果的に使えるアイテムになります。ちなみに、下記の写真のようなモデルさんが持っていた紫系の傘でも撮ってみました。
写真を撮るときは先ほどの「傘の持ち方と光の当たり方」を意識すれば、このように紫の影がつかないように撮ることができるんですけど、レタッチをする時に、色補正がとても難しくなります。
人物に合わせて露光量を明るくすると傘の色が飛んでしまうし、雨らしく全体を青よりにすると、傘の色がまだらになってしまいます。
この場合はLightroomでレタッチするより、細かく暗い部分を選択できる「Photoshop」でレタッチした方がいいでしょう。
透明傘越しでモデルを撮る事ができる
透明傘の良いところは傘越しにモデルを撮ることができるところ。
雨粒のついた透明傘越しにモデルを撮ることで、映画のワンシーンのようなシネマティックな写真になります。
透明傘越しで撮影する時のコツは2つ。
- モデルにピントを合わせて雨粒をぼかす
- 雨粒にピントを合わせてモデルをぼかす
僕が憧れている、ニューヨークが生んだ伝説の写真家『ソール・ライター』の作品の中に、雨降りの街で信号待ちをしている人をガラス越しにぼかして撮影している写真があります。
そう言ったイメージもあって、透明傘越しに撮影するとモデルのちょっとした表情がアートに見えてきます。
『ソール・ライター』について語っている記事はこちら。
余白を広く使った構図で撮ってみよう
雨の日のポートレート撮影に集中しすぎて似たような写真だと、モデルさんもどんどん疲れて集中力がなくなってしまいます。
そんな場合僕は、気分を変えるために色々な構図で撮ってみて、
「この構図面白い!」
「こんな構図でも撮ってみましょう!」
と、モデルさんも一緒にポートレート撮影を楽めている感を味わってもらうようにしています。
僕がよく気分転換をするために使う構図は、『ちょこん。の構図』です。
『ちょこん。の構図』はモデルさんのアイデア
『ちょこん。の構図』と言う名前は、暑い夏の日に大阪の中之島で撮影させてもらった時のモデルさんが放った一言から生まれた言葉なんです。
この日は8月ということもあって、炎天下の中で僕もモデルさんも暑さに耐えながらのポートレート撮影でした。1時間の撮影を予定していたのですが、僕が暑さのあまり45分で終わらせてしまったポートレート撮影。
さすがに暑すぎるため、高速道路の高架下の影がある場所へ移り、気分転換をするためにモデルさんと少し遊びのある構図で撮影をしていました。
その時に、僕がモデルさんを『ちょこん。』と小さく入れて、余白を広く使って撮影をしました。
その写真を見たモデルさんが「私、『ちょこん。の構図』も好きですよ」と喜んでくれたので、その言葉を使わせてもらいました。
ユーモアのあるモデルさんだったので僕的には楽しめましたが、真夏のポートレート撮影になってしまったことがとても申し訳ない気持ちです。
こちらの記事でも少し触れていますが、『ちょこん。の構図』は余白を広く使っていますが、三分割構図に似ています。
モデルさんをあえて小さめにして上下左右のどこかの余白を広めにとる構図で、ドラマチックにも見えるしアート写真のようにもなる不思議な構図です。
モデルさんをフレームの3分の1の部分に収めて、残りの3分の2の部分に思い切って余白をつくります。
ただし気をつけなければいけない事は、『ちょこん。の構図』を多用すると写真に自信がなさそうに見えてしまいます。
そしてモデルさんにも「あんまり面白くない写真ばかり、、、」と思われてしまうかもしれないので、全体の1〜2割程度で、気分を変えるために撮影する程度に使っています。
雨の日の『ちょこん。の構図』の効果
『ちょこん。の構図』を効果的に使えるシチュエーションは、水で濡れたアスファルト、水溜りがある場所、底が浅い川などがあります。
そういった場所で撮る事で、リフレクト効果があってウユニ塩湖のような写真を撮ることができます。
ウユニ塩湖はボリビアにある、誰もが一度は行ってみたい場所。そんな幻想的な世界を、日本でもアイデア次第で撮ることができます。
画像引用元 : Pixabay
『ちょこん。の構図』は、ポートレート撮影をする場所によっては、50mmや85mmの単焦点レンズだと距離が足りなくて撮れない場合があります。
『ちょこん。の構図』を撮るときは、ズームレンズを使うか人が少ないタイミングをねらって、広い場所で撮っています。
ストロボを使った撮影
雨の日のポートレート撮影は、晴れの日と違って太陽の光が雲に隠れてしまうため、午前中でも暗くなりやすいです。
そんな時に活躍するのが『クリップオンストロボ』。
モデルさんの背面に隠れるようにストロボを立ててクリップオンストロボで撮影すると、アートなシルエット写真を撮ることができます。
シルエットを撮る場合は、モデルさんの表情が見えなくても良いと僕は思っています。
なぜかと言うと、表情が見えない方が写真を見る人の想像力をさらに上げることができるからです。
[ ƒ/5・1/100・50 mm・ISO 640 ]
普通なら『ISO200』を基準にして、f値やシャッタースピードを調整しますが、今回は背景を薄暗くして全体に青っぽさを強調したかった為『ISO640』まで上げています。
そうすることで「エモい写真よりアートな写真になるのでは」とイメージしながら撮りました。
このように、どんな写真になるのかをいろいろ試しながら、その時の環境やカメラの設定のバランスを覚えていきます。
ちなみに僕が使っているストロボは『Godox TT600』と言うストロボ。コスパも良くて「GN(ガイドナンバー)60」と明るく発光できるストロボなのでとても重宝しています。
傘なしで高架下でも撮影
雨の日のポートレート撮影では、定番の透明傘で撮ることが多くなると思いますが、近くにトンネルや高架下のように屋根のある場所も効果的です。
雨の日の高架下で普通に撮影すると、とても暗い写真になってしまいます。
意図があって暗くなることは良いのですが、意味もなく顔が見えないくらいに暗くなると失敗感が出てしまいます。だからと言って、ストロボを使うと不自然な光が入ってくる。
そんな時にはISOを1000以上まで上げることもあります。ISOを上げると画像にノイズが入ってしまいますが、それが古びたフィルム感のような効果になることもあります。
ISOを上げて撮る場合は、何度かその場で試しながら一番バランスの良い設定を見つけながら撮ることが重要です。
雨の日をシネマティックに撮る場合に意識していることは、憂鬱な感情を表現した写真にするために暗めにレタッチします。
露光量を少し下げて色温度を青よりにするだけでも、上のような憂鬱な感情を表現することができるんです。
光の玉ボケを利用してドラマチックに演出
そして最後はモデルさんの顔により気味で、背景にイルミネーションなどの光があれば『玉ぼけ』で撮るのも良いです。
こうすれば映画のワンシーンのように、ストーリー性のある写真になります。
いかがだったでしょうか。
雨の日のポートレートでは透明傘を使うのが定番で、透明の質感を利用して色々なアングルでの撮影ができます。
色付きの傘を使う場合は、顔に色の影が入らないように工夫して撮る必要がありますが、アングルの自由度も少なくなります。
雨の雫を上手に使えば、モデルさんもシネマティックな感情になりやすいのかもしれません。
雨の日の撮影は、カメラにとってリスクも高くなります。一眼レフのメンテナンスをマメにすることも、写真家にとって大切なことなんですね。
僕は雨の日の撮影が嫌いだった
僕はもともと雨の日のポートレート撮影は、あまり好きではありませんでした。
なぜかと言うと、傘をさしていてもカメラが雨に濡れてポートレート撮影に集中できず、両手の自由がなくなってしまうからなんです。
だけど、自分がコンセプトにしている『心が揺さぶられるストーリー性を感じる魅力的な写真』を撮るには、雨の日のポートレート写真も魅力的な写真です。
雨の日の写真は、周りが薄暗く憂鬱な表情に見えるし、傘についた雨粒がモデルさんの表情をさらにシネマティックやアートな写真にしてくれます。
無理に明るく撮らなくても、雨の日らしく憂鬱な感情を撮れば良いと思得るようになり、そこから雨の日のポートレート撮影が好きになりました。
雨の日ポートレートの注意点
雨の日のポートレート撮影では、モデルさんも写真家も傘をさして撮影をすることが多くなります。
その場合に注意しておかなければいけない事は、傘を広げている分普段よりもスペースを使うことです。
つまり、雨で濡れた傘が通行人に当たらないように気をつけなければいけないと言うことです。
たとえ雨の日の人通りが少ないと言っても、通行人の邪魔にならないように注意しなければいけません。
そして雨の日は周りは暗くなるため、場合によってはストロボが必要になるでしょう。
だからと言って、がっつりした照明機材でポートレート撮影をすると、道を通る人の迷惑になってしまいます。
雨の日のポートレート撮影では、傘や照明機器で通行人の邪魔にならないように注意する必要があります。
雨の日が好きになった理由
僕はアート×写真家の活動をするまでは、雨の日があまり好きではありませんでした。
雨の日になると気圧の変化で頭痛になったり、薄暗い景色で憂鬱な気持ちになったり「ずっと晴れの日が続けばいいのに」と思っていました。
でも写真家として活動を始めると、なぜかポートレート撮影の当日が雨の日になることが多かったんです。
最初は雨の日のポートレート撮影は、一眼レフのことを気にしながら撮影するため、ポートレートに集中できませんでした。
だけど仕上がった写真を見ていると、晴れの日より心が揺れ動かされていることに気がつきました。
光が入らない薄暗い雨の日の景色は、モデルさんの感情をさらにシネマティックに演出してくれる効果があったんです。
たとえば、僕がインスタグラムに投稿したこちらの写真のように。
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雨の日は、憂鬱な気持ちになってしまうことが多いのですが、実はネガティブな感情というのは人の心が揺さぶられるとても素晴らしい表現なんです。そこから雨の日の写真を撮り始めました。
不思議なのは雨の日の写真を撮ることが好きになってくると、いつの間にか憂鬱な感情を持たなくなりました。
もちろん、雨の日になると気圧の変化で頭痛になることはありますが、雨の音には心がリフレッシュする効果があることを知ってからは、雨の日の頭痛の回数が減りました。
こうして雨の日に人物を撮るだけじゃなく、雨の日に街や自然を撮り歩きをするようになり「僕がその時に感じた心が揺さぶられる瞬間を撮影した写真を届けよう」と思うようになりました。
アート×写真家リョウが雨の日に撮り歩きをして、その時感じた想いをつづった言葉と写真をまとめた作品集「RAINY DAY Vol.1(全40ページ)/ B5サイズ」。
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