「せっかく楽しみにしていたモデルとのポートレート撮影なのに雨が降って残念…」
そう思ったことはないだろうか?
だけど雨の日のポートレート撮影は、映画のワンシーンのようなシネマティックでおしゃれな写真を撮るチャンスである。
ちなみに、シネマティック写真がどんな写真なのかを解説している記事がこちら。
だからポートレート撮影の当日が雨でも残念がらずに、雨らしく憂鬱な世界を表現すればいいのである。
目次
雨は写真撮影に集中できない
「雨の日は一眼レフが濡れて故障しないか気になって、ポートレート撮影に集中できない」
という写真家も多いだろう。
いくら雨の日写真が得意な僕でも、一眼レフを濡らさずに撮ることは不可能である。
もちろん室内撮影の場合は、雨の影響はないのでカメラが濡れる心配はない。
だけど、屋外で雨の日の撮影をする場合は、集中できないのが普通だ。
では、雨の日に屋外で撮影に集中するためにどうすればいいのかというと、撮る側に屋根があって、撮られる側には傘をさして雨の中の雰囲気を撮ればいいのである。
詳しくはこちらの記事で解説しているので、そちらも読んでほしい。
ではここから、モデルにポートレート撮影を依頼したと仮定して話を進めていくことにしよう。
当日キャンセルはモデルが困る
まず撮影当日が雨だからといって、直前になってモデルをキャンセルをするのは、とても失礼なことだと言っておこう。
モデル側にもスケジュールの都合や収入の都合もある。
せっかく撮影のために時間をあけてくれているのに、雨が降っただけでキャンセルされるのは、いい気がしないだろう(台風や自然災害は別として)。
多少の雨なら撮影を決行した方が、魅力的な写真を撮ることができて喜んでもらえる(どうしても雨がきになるなら、一方的にキャンセルの申し出をせずにモデルに相談すること)。
そこで、雨が降っていても撮影を決行する場合に使えるアイテムが『透明傘』である。
雨の日ポートレートの定番は『透明傘』
雨の日にポートレート撮影をするとき、僕は必ず撮影用の透明傘(ビニール傘)を持っていく。
普段自分が使っている透明傘ではなく、撮影専用としてコンビニで700円で購入した安いビニール傘だ。
撮影用にしている理由は、普段使っている傘だと汚れが目立ったり、知らないうちに骨組みが壊れている場合があるからだ。それに、自分が使っている透明傘をモデルに持たせるのは失礼になるので。
透明傘が雨の日のポートレート撮影に使える理由は、次の3つ。
・透明傘越しでモデルさんを撮る事ができる
・雨の雫がついた透明傘はエモい写真になる
それでは1つずつご説明しよう。
透明傘は顔に影ができにくい
雨の日のポートレート撮影で透明傘を使うのは、顔に影ができにくいのが理由の1つだ。
雨の日は周りの環境が薄暗くなるため、色付きの傘だと顔が暗くなりやすい。
後の項目で色付きの傘で撮影した写真も載せているが、色付きの傘だと顔に不自然な色の影ができてしまう。
傘の色によっては、モデルの顔色が悪く見えてしまうこともある。
その点、透明傘だとほんのりした光でも傘越しに入ってくるため、自然な雨の日らしい明るさで写真を撮ることができるのである。
撮影時の傘の持ち方
雨の日のポートレート撮影で、不自然にならない傘の持ち方を解説しよう。と言っても、難しいものではない。
簡単に言えば、傘の中棒と呼ばれる部分を肩に乗せてもらうだけで、自然な写真を撮ることができる。
宣材写真や記念写真を撮る場合は、正面でカメラ目線でもいいが、シネマティック写真にするには、あえてカメラから目線を外す方がストーリーを想像する楽しさを感じてもらえる。
透明傘を肩に乗せて撮る時は、写真家から見て奥の肩に柄の部分を乗せてもらい、斜め『45°〜90°』くらい横に向いてもらうと、綺麗なアゴのラインが見えて憂鬱な感情に見えて雨らしい写真になる。
では透明傘と色付き傘の違いを見ていこう。
色付きの傘の場合
色付き傘は写真にメリハリが出しやすいが、普通に撮ると顔に傘の色の影がついてしまう。
顔に色の影がついてしまうと、レタッチをする時にとても時間がかかるので、多様しないほうがいい。
どうしても色付きの傘を使いたい場合は、赤い傘がオススメだ。
赤は雨の日の環境だと差し色になるので、写真にメリハリをつけることができてアートな写真になる。
僕が好きな写真家ソール・ライターも、赤い傘をさしている人の写真が有名だ。
ただ色付き傘の場合は、顔に傘の色の影がつきやすいので、持ち方に工夫をする必要がある。
例えば、顔に傘の赤い影ができないようにモデルさんの顔前方から光が当たるようにしたり、傘を高く上げて顔に傘の色の影が入らないようにしたり。
赤い傘を高く上げてもらうことで、真上からの光でも顔に赤い影ができるのを防ぐことができる。
このように、持ち方や光の当たり方を工夫すれば、赤い傘も雨の日の撮影には効果的に使えるアイテムになる。
ちなみに、下記の写真のようなモデルが持っていた紫色の傘でも撮ってみた。
写真を撮るときは先ほどの「傘の持ち方と光の当たり方」を意識すれば、このように紫の影がつかないように撮ることもできる。
透明傘の場合
透明傘の良いところは傘越しにモデルを撮ることができるところ。
雨の雫がついた透明傘は、芸術的な写真になる。
雨の雫がついた透明傘越しにモデルを撮る時のポイントは、次の2つ。
・雨の雫にピントを合わせてモデルをぼかす
それがこちらの2枚の写真。
色付き傘では撮ることができない傘越しの人物写真。僕が雨の日の撮影でよく使う方法だ。
余白を広く使った構図で撮ってみよう
雨の日のポートレート撮影に慣れていないうちは、一眼レフが濡れないか気になって、どれも同じような写真になってしまう。
そのような写真はモデルからすると「私って表現力がないのかな?」と不安にさせてしまったり、「また同じ写真」と思われてモチベーションが下がってしまう。
そんなとき僕は、モデルの気分を変えてもらうために、色々な構図で撮って「この構図面白い!」「こんな構図でも撮ってみましょう!」と、一緒に撮影を楽めている感をだすようにしている。
僕がよく気分転換をするために使う構図は、人物をあえて小さめにして、上下左右のどこかの余白を広めにとる構図。
よく不思議な世界観のある映画を見ていると、余白を広くとった構図を見ることがあって、アートのようにもなる不思議な構図だ。
人物をフレームの3分の1の部分に収めるイメージで、残りの3分の2に余白をつくる。
ただし気をつけなければいけないなは、余白の広い構図を多用すると写真に自信がなさそうに見えてしまう。
なので全体の1〜2割程度にして、気分転換のために撮影するだけに使うのがオススメだ。
ストロボを使った撮影もアートになる
雨の日のポートレート撮影は、晴れの日と違って太陽の光が雲に隠れてしまうため、午前中でも暗くなりやすい。そんな時に活躍するのが『クリップオンストロボ』だ。
クリップオンストロボとは、外部ストロボ(スピードライト)をカメラから離した位置に設置して被写体に光を当てる技法。
詳しくは僕が運営している芸術系ブログの方で話している。
クリップンストロボの作例
では1つ、クリップオンストロボを使って雨の日にモデルを撮影した写真を紹介しよう。
その写真がこちら。
[ ƒ/5・1/100・50 mm・ISO 640 ]
モデルの背面に隠れるようにストロボを地面に立ててクリップオンストロボで撮影。
このように撮影すると、モデルがシルエットになったアートな写真を撮ることができる。
ちなみに僕が使っているストロボは『Godox TT600』と言う機種。
コスパも良くて『GN(ガイドナンバー)60』と発光量も強く、安定して使えるストロボなのでとても重宝している。
傘なしでも撮影できる場所がある
雨の日のポートレート撮影では、定番の透明傘で撮ることが多くなると思うが、トンネルや高架下のように屋根のある場所も効果的だ。
雨の日の高架下で普通に撮影すると、とても暗い写真になってしまう。
意図があって暗くなるのはいいが、意味もなく顔が見えないくらいに暗くなると失敗感が出てしまう。だからと言って、ストロボを使うと不自然な光が入る。
そんな時は、ISOを1000以上まで上げることもある。
ISOを上げると画像にノイズが入ってしまうが、それが古びたフィルム感のような効果になることもある。
ISOを上げて撮る場合は、何度かその場で試しながら一番バランスの良い設定を見つけながら撮ることが重要だ。
雨の日をシネマティックに撮る場合に意識していることは、憂鬱な感情を表現した写真にするために暗めにレタッチすること。
適正露出を1〜2段下げて、色温度を青よりにするだけでも、上のような憂鬱な感情を表現することができる。
絞り開放で光の玉ボケを効果的に使う
そして最後はモデルの顔により気味で、背景にイルミネーションなどの光があれば、絞りを開放(F2.8〜5.6)で『玉ぼけ』を撮るのも効果的だ。
こうすれば映画のワンシーンのように、ストーリー性のある写真になる。
いかがだっただろうか。
雨の日のポートレートでは透明傘を使うのが定番で、透明の素材を利用して色々なアングルでの撮影ができるのも透明傘のメリット。
色付きの傘を使う場合は、顔に色の影が入らないように工夫して撮る必要があり、アングルの自由度も狭くなる。
雨の雫を上手に使えば、モデルをシネマティックに撮ることもできるだろう。
雨の日の撮影はカメラにとってリスクが高くなるが、一眼レフのメンテナンスをマメにすることも、写真家にとって大切なことである。
【余談】僕は雨の日の撮影が嫌いだった
僕はもともと雨の日のポートレート撮影は、あまり好きではなかった。
その理由は、傘をさしてもカメラが雨に濡れてポートレート撮影に集中できないし、両手の自由がなくなってしまうからである。
だけど、自分がコンセプトにしている『心が揺さぶられるストーリー性を感じる写真』を撮るのに、雨の日の人間らしい負の部分も心に響くと知ると、雨の日の撮影が好きになってきた。
無理に明るく撮らなくてもよく、雨の日らしく憂鬱な感情を撮ればいい。それが、雨の日の人間の心にある感情だから。
雨の日ポートレートの注意点
雨の日のポートレート撮影では、モデルも写真家も傘をさして撮影をすることが多くなる。
その場合に注意しておかなければいけないのが、傘を広げている分、いつもよりスペースを使っているということである。
つまり、撮影に集中しすぎて濡れた傘が通行人に当たってしまうこともナイトは言えない。
そう言った意味では、雨の日は晴れの日以上に周りに注意しながら撮影をしなければいけないため、撮影に集中することは難しいだろう。
だけど雨の日には人間らしいストーリー性のある写真を撮ることができるので、朝鮮して見る価値は十分にある。
そして雨の日は周りは暗くなるため、場合によってはストロボが必須になるだろう。
だからと言って、がっつりした照明機材でポートレート撮影をして、通行人の迷惑にならないように気をつけよう。
今回の記事を思い出せば、きっとあなたにも魅力的な雨の日の人物写真を撮ることができるだろう。
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