「ストーリー性のある写真ってどうやって撮るの?」
「映画のワンシーンのような写真を撮りたい!」
一眼レフでもスマホカメラでも、ストーリー性のある写真を意識することで、心が惹きつけられる魅力的な写真になります。例えば、映画のワンシーンを切り取ったような写真を撮ること。
そのような写真のことを僕は「シネマティック写真」と言っています。
ストーリー性を感じる写真と言っても、人によって感じ方が違うので「これが正解!」と言うことはできませんが、僕なりのシネマティック写真のイメージがあって、そのイメージをモデルと共有することでストーリー性のあるシネマティック写真を撮ることができます。
では具体的に「シネマティック写真の撮り方」について、より心が惹きつけられる写真の撮り方を共有したいと思います。
目次
シネマティック写真とは?
まず「シネマティック写真」がどんな写真かと言うと、映画のワンシーンを切り取ったような写真で、その写真を見て過去の情景や未来の情景が想像できる写真。僕はそれを「シネマテック写真」と言っています。
たとえば、何気ない日常の中にある心が惹きつけられた瞬間を写真に撮って、ほんのり暗くオールドフィルム調に加工した、下記のような写真。
この写真は、仕事の疲れをとるために自然を撮り歩いた時に僕が撮った写真で、山道を車で走っていて人が歩いていない場所に生えていて、誰からも手入れされずに寂しそうにうつむいているように見えた枯れススキ。
僕はこの時、仕事で疲れた自分の心を表現してくれているようで、その枯れススキのストーリーが見えたので、思わず車を路肩に停めて写真を撮りました。
僕が撮るシネマティック写真は、ほんのり暗く余白が広い写真が多いんですけど、その「余白」にストーリーを感じるんです。
僕が「シネマティック写真」を撮るときに意識していることは、次の3つです。
- シネマティックに感じる構図(撮影時)
- 映画のような質感を出す(レタッチの時)
- 写真を撮影した時の情景を伝える(公開するとき)
シネマティックに感じる構図(撮影時)
僕がシネマティック写真を撮る時は構図を意識していて、とくに「三分割構図」はよく使います。
「三分割構図」については、下記の記事でくわしく解説しているので、ぜひ読んでみてください。
「三分割構図」を意識して写真を撮ると写真に「余白」ができて、その「余白」にストーリーを感じます。
もちろん、ただ「余白」入れていると言うわけではなく、「余白」を入れるのには、そこに意味があって、余白を入れる場所によっても写真の印象が違ってきます。
参考に、左右の余白の印象を下記の写真でご説明します。
【右に余白をとった場合】
※写真撮影 : アート写真家リョウ
右に余白をとると「過去」に対するストーリーが伝わりやすく、過去に経験したエピソードを踏まえてアピールする場合に効果的です。
【左に余白をとった場合】
※写真撮影 : アート写真家リョウ
左に余白をとると「未来」に対するストーリーが伝わりやすく、未来に向けた夢や目標を話す場合に効果的です。
このように、イメージしたストーリーに合わせて構図を決めると、より魅力的な写真になります。
上記以外にもいろいろな構図がありますが、その話は後途の『構図のいろいろ』の項目でまとめています。
映画のような質感を出す(レタッチの時)
撮影時にカメラの設定でシネマティックな写真になるように、撮影技術を上げることが大事ですが、味付けとしてレタッチソフトを使うことも大切です。
Adobe社の「Lightroom」や「Photoshop」を使えば、写真の表現の自由度が上がるので、自分なりにイメージした映画の質感をつくることができます。
映画の質感にするポイントは、彩度を低くしてコントラストを弱めにすること。
彩度の差やコントラストに差が出てしまうと、綺麗で高画質な写真になりますが、長く見ていると目が疲れる印象があります。
たとえば、テレビの画質設定の「ダイナミック」を思い浮かべてください。テレビの「ダイナミック」は、色が鮮やかで映像が明るく綺麗に見えますが、長く見ていると目が疲れてきますよね。
写真も同じで、彩度やコントラストを上げすぎると違和感が出て目が疲れてくるんです。
長期的に見たくなる写真には、彩度やコントラストの差が低く、レトロで懐かしさを感じる質感にするのが効果的です。
写真を撮影した時の情景を伝える(公開するとき)
ただ写真を見てもらうだけでは、その写真のストーリーは伝わりません。写真のストーリーを伝えるためには、写真を撮影した時の見えない情景を伝えることも大切です。
その写真を撮影した時の気持ち、なぜその写真を撮ろうと思ったのか、その写真をとった時の環境や出来事など、そういった情景を伝えることで、その写真に興味を持ってもらうことができます。
人は、ストーリーがあるものに「興味」をもつ生き物で、そのストーリーを自分に置き換えて「興味」から「共感」に変わり魅力を感じます。
撮影した写真を、ただポートフォリオサイトに公開するだけではなく、撮影したときの気持ち、その時の状況、撮影した経緯などを添える方が、クライアントさんに興味をもってもらえます。
ちなみに「写真家がポートフォリオサイトを持っておくメリット」について書いた記事もあります。
ポートフォリオサイトは、24時間365日オンライン上で自動で営業をしてくれているようなものなので、個人の写真家としてはとても強いツールになります。ぜひ、読んでみてください。
「構図」のいろいろ
では先ほど『シネマティックに感じる構図(撮影時)』の項目で話した、その他の構図についてお話しします。
僕が写真を撮るときに意識していることは、できるだけ被写体(人物)をフレームの中央に配置しないこと。
写真のストーリー性を上げるために、左右上下のどこかに「余白」を入れて撮るようにしています。
写真撮影でよく使われる構図が、次の3つです。
- 黄金比
- 三分割構図
- 日の丸構図
黄金比
「黄金比」は、最も安定的で美しいとされている比率で、その比率は『1:1.618』です。
下記のような図形を見たことはありませんか?
被写体の一番見せたい部分を、フレームに対して渦のスタート地点(上の図では小さな正方形部分)に配置することで、バランスが良く、安定した綺麗なデザインになると言われています。
ただ黄金比の難しいところが、毎回この黄金比を計算してそれをフレームに当てはめるのは難しいため、次に解説する『三分割構図』が瞬時にイメージしやすくて簡単です。
三分割構図
黄金比に近い構図という意味では『三分割構図』というものがあり、写真家がよく使う簡単な構図です。
下記に、とても単純でわかりやすくしたイラストをご用意いたしました。
三分割構図は、フレームの縦横を三分割して、線と線が交わる「点」に被写体の見せたい部分を配置すると、バランスのいい写真になります。
【縦横三分割した図】
その三分割した線を消すと、余白が生まれてスッキリした印象があり、その余白にストーリーをつくることもできます。
【三分割した線を消した図】
この三分割構図を意識することで、最近よく聞く『エモい写真』や『アートな写真』を撮ることができます。
日の丸構図
次に、被写体をフレームの中央に配置した『日の丸構図』。この『日の丸構図』は、フレームの中央に配置する構図で、記念写真、結婚式の前撮り写真、商品写真などでよく使われる構図で、見せたいもの(被写体)に集中させたいときに効果的です。
【日の丸構図】
シネマティック写真を撮る場合、被写体を中央に配置してしまうと記念写真っぽさが出てしまってありふれた写真になってしまうのですが、あえて『日の丸構図』で撮ることもあります。
例えば、こちらの背景にススキが広がる写真。
※写真撮影 : アート写真家リョウ
この写真の場合は、背景のススキと手前のボケたススキを強調して、自然の中に迷い込んだ表現を大たかったので『日の丸構図』で撮りました。
このように『黄金比』『三分割構図』『日の丸構図』を使い分けることで、写真の表現の幅もグングン広がっていきます。
では最後に、せっかくなので「心が惹きつけられる写真の表現」について少しお話しします。
心が惹きつけられる写真の表現の仕方
心が惹きつけられる写真の表現の仕方には色々な要素がありますが、とりあえず覚えておくと良い表現の仕方をお伝えします。
写真の魅力を上げるためには、次の4つの表現を意識してみてください。
- 「ほんのり暗め」な部分に心が惹きつけられる
- 遠くを見ると、さらにストーリー性がアップする
- 自然な笑顔を撮る
- フェイスラインを意識する
「ほんのり暗め」な部分に心が惹きつけられる
人物写真を撮る場合、ほとんどの写真家がモデルさんを明るめに撮ることが多いかと思います。でも僕は、あえてほんのり暗めに撮ることが多いです。
その理由は、僕自身が自分の写真を見たときに、ほんのり暗めの方がストーリー性がでて心に響きやすいと感じたからです。
もちろん、明るく撮ればモデル綺麗にを可愛く撮ることができて、喜ばれるかもしれません。
だけど、ほんのり暗めの写真は「憂鬱な感情」が表現しやすく、「失敗、不安、寂しい、悲しい」のような印象を出すことができます。
人は成功いた人より、失敗した人に人間味を感じて「共感」や「応援」をしたくなるもの。
それに、モデルさんの溢れ出た感情をストレートに伝えることもできます。
例えば、こちらの2枚の写真。
※写真撮影 : アート写真家リョウ
※写真撮影 : アート写真家リョウ
この時のモデルさんは、モデルを目指すために僕の作品撮りモデルに応募してくれた人で、どんなポージングをすればいいのか悩んでいて、その一瞬の表情を撮った写真です。
僕はポージングを指示するのがあまり得意ではないのですが、この時はあえて「自由に」と伝えると、憂鬱でいい表情をしていたので撮らせてもらいました。
この写真には「悩み、憂鬱」さがにじみ出ていて、人間らしい部分だと感じます。
人がストーリー性を感じるものに共感する理由は、幸せ、愛情、憂鬱、寂しさなどを感じることで「オキシトシン」というホルモンが増加するからだと言われています。
SNSもインパクトのある写真を投稿するよりも、ストーリー性のある写真を投稿する方が共感されやすくフォローワーにも繋がります。
このストーリー性は、写真だけではなく、文章、歌、SNSの投稿などにも効果的です。
遠くを見ると、さらにストーリー性がアップする
僕がストーリー性のある写真を撮るのに意識していることは、できるだけカメラ目線にならないようにしてもらうことです。
僕は写真撮影の時、モデルさんの自然な表情を撮るために、できるだけ自由に動いてもらっています。モデルさんからすれば、それが難しいようなんですけど、、、。
細かなポージングをほぼ指定しませんが、下記の写真ように「少し横を向いて遠くを見てください」くらいは伝えさせていただいてます。
※写真撮影 : アート×写真家リョウ
僕の写真を見ると気づくと思いますが、横向きの写真が多く、笑顔の写真がほとんどありません。
僕のシネマティック写真のイメージは、できるだけモデルさんの自然の表情を撮ること。そのためにシャッターを押す前後は、ほとんど無口になります。
もちろんシャッターを押さないときはモデルさんと世間話をしますが、撮影中はモデルさんが表現に集中できるように無言になります。
そんな僕でも、笑顔が欲しいときもあります。
自然な笑顔を撮る
自然な笑顔が欲しい時は、モデルさんと会話をしながらシャッターを押します。その方が、自然な笑顔を撮ることができるからなんですね。
例えば、こちらの3枚の写真のような感じです。
世間話をしながら撮ると、とても自然な感じの笑顔を出してもらえます。
モデルさんも、ずっと素の表情のままだと楽しくないし疲れますからね。
フェイスラインを意識する
そして最後にもう1つ、僕がシネマティック写真を撮影するときに意識していることは「フェイスライン」です。とくに、モデルさんの綺麗な顎(アゴ)のラインを撮ることです。
女性モデルの場合は、とくに顎(アゴ)のラインが綺麗に撮れるとすごく喜んでもらえます。そうすることで、モデルさんの撮影のモチベーションにも繋がります。
ポイントは上を向きすぎないように、気持ち顔が上に向くイメージで、半逆光気味で「光と影」をうまく使ってフェイスラインの輪郭をだすこと。
と言っても、夕日が出たときに光の方を向いて少し上を向いてもらえば、上記のような写真を撮ることができます。
最後に
と言うことで、今回は『ストーリー性のあるシネマティック写真の撮り方』についての話をしてきましたが、いかがでしたか?
僕がシネマティック写真を撮るときに意識していることは、
- 安定的でバランスが良い構図
- カメラ目線より遠くを見てもらう
- 時には会話をしながら自然な笑顔を撮る
- モデルさんの綺麗なフェイスラインを撮る
このようなことを意識するだけでも、ストーリー性のあるシネマティック写真を撮ることができます。
最近では、スマートフォンでも機種によっては、シネマティックモードで撮影できるものもあります。
だけど、一眼レフと比較できるほどのクオリティーはまだ出すことができません。
僕らしいストーリー性のあるシネマティック写真は、僕の頭の中にしかない世界。
ここで、僕のシネマティック写真の撮り方を解説したところで、それを100%真似することはできないと思います。
反対に、あなたらしいシネマティック写真はあなたにしか撮れない写真で、僕には撮れないと言うことになります。
SNSが普及している今の時代、これからは写真の魅力を上げる方法を伝えることも必要です。
自分らしいストーリー性のあるシネマティック写真は、他の写真家との差別化をするために、必要な撮影技術になっていくと僕は考えています。
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